自分のことを「メンタルが弱い」と思ったことはありませんか?
世界保健機関(WHO)によると、2020年時点でうつ病に苦しむ人は世界で2億6400万人以上いると言われています。新型コロナウイルスの影響で心のバランスを崩す「コロナうつ」をはじめ、職場でのストレスやプライベートでの諸問題は、健全な生活を送るうえで大きな妨げとなります。
心のバランスを崩すと、いいパフォーマンスやコミュニケーション力を発揮できないほか、うつ病や睡眠障害、パニック障害といった疾患を抱えるリスクが高まります。そうならないためにも、メンタルトレーニングを通して強い心を手に入れる必要があるのです。
目次
「メンタルが強い」「メンタルが弱い」ってどういうこと?
・メンタルが強い人はいない

そもそも、「メンタルが強い」「メンタルが弱い」とはいったいどういうことなのでしょうか?
まず、メンタルが強いという言葉の定義として、メンタルそのものが強いのではなく、ネガティブな出来事に対する感情のかわし方が上手であると考えられます。
たとえば、会社でプレゼンを任された男性がいたとします。何日もかけて情報収集し、資料を作成してプレゼンに臨んだ彼は、緊張しながらも何とかプレゼンを乗り切りました。しかしその後、上司から厳しいフィードバックを受けてしまいます。さて、このあと彼はどう思うでしょう?
- ①「改善点を生かして次は頑張ろう」
- ②「いろいろ言われたけど気にしない」
- ③ 「頑張ったのに怒られた」
①は結果をポジティブにとらえ、次に生かそうとしている姿勢が見受けられます。かわし方としては①が理想です。目を背けるのではなく、今後似たようなことが起きても対処できるようにしておくことで、耐性を作るのです。
②は一見メンタルが強いように見えますが、今後への対処については考慮されていません。これは、誹謗中傷や嫌がらせといった悪意ある言動などに対しては有効でしょう。目の前の出来事が自分にとって大事かどうかを判断し、状況に応じてこういった選択をするとよさそうです。
問題は③です。
フィードバックをネガティブに受け止めることで、「情けない」「悔しい」「自分はダメだ」などと思い込み、自信を失ってしまいます。これは真面目な人や完璧主義者に多く見られる特徴で、理想を下回る結果を前にすると自己嫌悪に陥ってしまうのです。
・メンタルが弱い人は切り替えが大事

人は、自分にとって不都合なことが起きた際にまず不快感を感じます。不快感を感じたあと、「イライラ」「モヤモヤ」といったネガティブ感情が湧いてくるのですが、この不快感→ネガティブ感情という流れは脳のメカニズムであり、変えることはできません。
メンタルが弱いと言われている人の多くは、不快感後のネガティブ感情に振りまわされ、やがて自らが作り出した「ネガティブの檻」に閉じ込められてしまいます。
しかし、メンタルが強いと言われている人たちは、ネガティブ感情に振りまわされる前にポジティブな考え方に切り替えることができます。
この切り替えができるかどうかがポイントであり、前出のプレゼンの話で言えば「上司のおかげで成長できる」「自分には伸びしろがある」といったような前向きな思考回路を獲得することが大切です。
今からできる!メンタルトレーニングの方法5選

筋力や持久力と同じで、メンタルは誰でも鍛えることができます。ここではおすすめのメンタルトレーニング法を5つご紹介します。
トレーニング法1.自分と向き合う「セカンドパーソン・セルフトーク」

セカンドパーソン・セルフトークは、主語を変えて自分自身と会話をするという手法です。自分のことを他者目線から捉えることで客観的になることができるのです。
具体的には、「一人称」「二人称」「三人称」というように、自分に対して主語を変えて語りかけます。たとえば、プレゼン前に緊張している男性が落ち着きたいと思った場合、以下のようになります。
・ファーストパーソン(一人称)
「ものすごく緊張する。準備はしたはずだけど、みんなに理解してもらえるだろうか」
・セカンドパーソン(二人称)
「ねぇ君、緊張なんかする必要ないよ。しっかり準備したんだから、後は自信もって発表するだけだ」
・サードパーソン(三人称)
「彼、緊張する必要ないのに。頑張って準備してたし、自信もって発表すればわかってくれるはずだよ」
このように、自分のことをあたかも他人であるかのように俯瞰することで、自分自身と距離を置くことができて冷静になれるのです。
トレーニング法2.マインドフルネス瞑想

「今この瞬間を大切にする」というような意味で使われているマインドフルネスという考え方があります。マインドフルネスを基にしたマインドフルネス瞑想は、認知行動療法の一種として精神科などでも活用されています。
たとえば手のひらに豆を置いたときのようなごくわずかな刺激に注意を向け、ネガティブな出来事から意識を離していきます。ストレスの原因から遠ざかったところで改めて出来事に目を向けると、今まで気づけなかった側面が見えてきて問題解決につながります。
- 背筋を伸ばして座り
- 目をとじて自分の呼吸を感じ
- 雑念が入りそうになったら呼吸に意識を戻す
マインドフルネス瞑想で意識するのはこの3つです。最初は3~5分を目安に行い、慣れてきたら10分、15分と時間を延ばしていくといいでしょう。
トレーニング法3.ハエの視点になる「フライ・オン・ザ・ウォール」

自分を客観視するという点においては、フライ・オン・ザ・ウォールも有効です。文字通り、壁に止まったハエ(虫)になったつもりで周りを俯瞰し、自分が置かれている状況を把握するのです。
フライ・オン・ザ・ウォールはアメリカのオハイオ大学による実験で効果が実証されているストレスケアメソッドであり、マインドフルネス瞑想同様、道具を必要とせずどこでも行うことができます。
このテクニックで大事なのが、自分のことを外部から見る視点を作ることです。
現実の体験と自身の感情の間に距離が生まれ、ネガティブな思考に流されにくくなります。ですので、イメージするのは虫でなくても雲でも街灯でも構いません。これを続けることで客観視する癖がつき、ストレスで頭がカッとなってもクールダウンさせることができるのです。
トレーニング法4.紙に書き出して頭を整理する

ネガティブな出来事が起きて、それについてあれこれ悩んでしまう時には、いったん紙に書き出してみましょう。
書き出す内容は主に、起きた出来事とそれについての感情です。
- ・友達とケンカした…モヤモヤ
- ・休日出勤になった…悲しい
- ・渋滞に巻き込まれた…イライラ
このように、思っていることを紙に書いて可視化することで自然と頭が整理されていきます。自分はなぜ今モヤモヤしているのか、なぜイライラするのかを再認識していくと、自分の思い込みや主観によって事実が歪曲していることに気づくかもしれません。
ネガティブ感情は連鎖しやすいため、一度ネガティブな気持ちになるとどんどん気分が下がってしまいます。紙に書いて気持ちを整理し、物事をなるべく楽観的に捉えることができないかを考えることが大切です。
トレーニング法5.ポジティブな自動思考を身につける

メンタルが弱い人の多くは、何かが起きた時に反射的にネガティブ思考になる傾向にあります。これは自動思考と呼ばれるもので、ネガティブな自動思考が続くと抑うつ症状を引き起こすおそれがあります。
しかし、自動思考はトレーニング次第で変えることができるので、3つのポイントを意識してポジティブな自動思考を手に入れましょう。
- 成功体験を振り返る
- ネガティブになったらポジティブなことを考える
- いい記憶が自分にどんな影響を与えているかを考える
まずは、「褒められた」「いい点数をとった」など何でも構わないので、かつてうまくいった成功体験を思い出します。 それがどんな要因によって生み出されたのかを考えることで、成功や失敗の秘訣を紐解くのです。成功体験をたくさん思い出すことでポジティブな自動思考になっていきます。
また、失敗から立ち直った経験を思い出すことも効果的です。ネガティブになったときにポジティブ思考に切り替えるためには、かつての失敗から得たものを想像するといいでしょう。「仲間の大切さを知った」「後々話のネタになった」など、出来事に対して前向きに捉えることが重要です。
さらに、失敗によって仲間に励まされたのなら、自分は人徳のある人間なのかもしれないと考えることもできます。話のネタにできたのであればユーモアのある人間かもしれません。そうやってポジティブ思考を刷り込んでいくことで、自然とポジティブな自動思考が発動するようになるのです。
メンタルトレーニングで心も体も健康になろう

メンタルトレーニングについて述べましたが、メンタルが弱いというのは何もデメリットばかりではありません。
些細なことで思い悩むようなことがあれば繊細で感受性が豊かとも捉えられますし、不安や緊張に押しつぶされそうになるのはそれだけ責任感が強いとも考えられます。
メンタルが弱いことでメンタルを鍛えようと思っている人は、そんな自身の長所を失くさないように気をつけましょう。素晴らしい長所は残しつつ、弱点を補完できるようになれば今よりもっと素敵な人生が待っているはずです。
また、今はスマホアプリでメンタルケアができる時代です。AIロボと会話しながら心を落ち着かせ、感情を記録することで自身を客観的に見ることができます。話せば話すほどユーザーを知り、より的確なアドバイスやカウンセリングを受けることができるので、よかったら試してみてください。
→ SELF MIND
Source:
【World Health Organization】
【BlueCross BlueShield THE HEALTH OF AMERICA】