• 「職場や学校で自分の意見を言い出せない…」
  • 「面接の自己PRがうまくできない…」

このような経験はありませんか?
自分に自信を持てず、意見をハッキリ言えなかったりするともどかしいですよね。

しかし、自信のなさや自己主張への抵抗感は練習によって改善されることがわかっています。

ご紹介する「アサーション・トレーニング」も、自己主張ができるようになるトレーニングの一つです。

日本人は自己主張ができない?

顔を手で隠す女性
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ところで、よく「日本人は自己主張が苦手」なんてことを聞きませんか?2018年の内閣府調査「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」をみるとその実態がわかります。

「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」という項目において「そう思う」と答えた割合が13.8%と、諸外国と比べて半分以下であることがわかります。(図1)たしかに日本人は自己主張ができない傾向にあると言えそうです。

自分の考えをはっきり相手に伝えることができるかどうか、国別の割合の表
図1.自分の考えをはっきり相手に伝えることができる
引用:我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)

「空気を読む」という言葉が体現していますが、どうも日本人の国民性として、自己主張を控えて和を乱さないことをよしとする傾向にあると考えられます。

一方で、進学や就職活動の面接などでは、必ずと言っていいほど自己PRが求められますよね。普段は自己主張を控えているからこそ、このような自己主張を求められる場面では普段とのギャップを感じやすいのではないでしょうか。

このことからも、自信のなさや、自己主張ができないということで悩むことは、決して珍しいことではないということがわかります。

練習すれば改善できる自己主張

登壇して喋る男性
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それでは、どのようにすれば自己主張ができるようになるのでしょうか。

自己主張への抵抗感をなくし、自信や自己肯定感を高める練習の一つが「アサーション・トレーニング」です。

聞き馴染みのない単語「アサーション」とは一体なんでしょう?アサーションについての説明を引用すると、以下のように定義をされています。

「自分の気持ちを大切にして、自分の考えを正直に率直に、適切な形で表現すること」であり、「自分と相手の相互を尊重するコミュニケーション」である。

引用:自己アピールの苦手意識に対するアサーション・トレーニングの効果ー「自分のこだわり」を語るワークを取り入れてー

つまり、自分の気持ちや意見をきちんと伝えられるようにするということです。

先述の通り、特に日本人はこういった自己主張になれていないため、不安や抵抗感を覚えやすい傾向にあります。しかし今後ますます個人の能力重視になると予想される社会においては、自己主張も必要不可欠な能力になっていくと考えられます。

そうした情勢を踏まえると、トレーニングによって自分らしさを表現できるようにすることは、ストレスへの対処という意味でも大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。

押しの強さとは違う? アサーションのポイント

みんなの前で手を挙げる
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それでは「自分の言いたいことを言う」ことだけが、アサーションなのでしょうか?

そうではありません。
重要なポイントは、自分の意見を大切にすると同時に、相手の意見を受け入れ自分の意見と同じくらい尊重することです。

例えば誰かと意見が食い違ったとき、一方の意見を押し付けたり、どちらかが簡単に妥協するだけでは、建設的な議論にはなりません。

そのような場合でも、意見の食い違いを恐れることなく、お互いが相手の意見を受け入れて、その結果として第三の答えに到達することが、アサーション・トレーニングにおいて目指すべき姿なのです。

アサーション・トレーニングをやってみよう!

ディスカッションする大人達
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それでは、具体的に、アサーション・トレーニングとはどのようなものなのでしょう?

大事なのは「こだわりを語ること」

簡単で抵抗感が少ない方法として、自分のこだわりを語るトレーニングでも自己主張への苦手意識が軽減されることがわかっています。

就職活動中の大学生を対象にした実験では、自分のこだわり(好きな食べ物や趣味、仕事、嫌いなものなど、どんなものでも)について語り合うワークを週に1回、5週に渡って行ったところ、実験前と比較して自己PRへの苦手意識が改善されました。

こだわりを語ることが自分らしさを表現するトレーニングになったと同時に、他者の「こだわり」に耳を傾ける際、相手の意見を聴き、受け入れるという態度を実践した結果、「何を言っても大丈夫」という安心感が生まれたことが、自己主張の苦手意識改善につながったと考えられています。

トレーニングの題材が組織内の問題や社会的なテーマだと、どうしても「何か言わないと」というプレッシャーを感じてしまいそうですよね。

しかし、テーマがこだわりだとどうでしょう? 難しいことを考えず、興味のあるもの好きなものについて語ればいいので、肩の力を抜いて自分らしさを表現することができるのではないでしょうか。

受け入れることでストレスを減らそう

広い道で手を広げる男性の背中
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「こだわりを語る」というアサーション・トレーニングについて紹介しましたが、会社や学校でこのトレーニングを取り入れる際に気をつけたいのは 「アサーション」とは自分の意見と他人の意見を同じくらい尊重することが前提だということです。

  • 「もっと自己主張して」
  • 「なにか意見ないの!?」

など、自己主張や自信のなさについては、どうしても個人の問題として捉えられがちです。ですがその前に、その集団の中において「何を言っても受け入れられる」という安心感のある場をつくることが大切だと言えるでしょう。

一方、個人で行う場合でも、こだわりを語るトレーニングであれば比較的簡単にできるのではないでしょうか。

友人や家族を相手にお互いのこだわりを語り合ってみるのもいいかもしれません。その際は、自分のこだわりを語ることに夢中なりすぎて、相手の話を聞くことが疎かにならないよう注意が必要です。

それもちょっと…という方は、まずはSNSなどを使って、自分のこだわりについて発信してみてはいかがでしょうか。実際に会って話すのとは違う部分もありますが、まずは自分らしく表現することに慣れる、という意味ではSNSの活用を考えてみてもいいかもしれません。

Source:
久保山 明梨、吉岡 和子 
福岡県立大学心理臨床研究 : 福岡県立大学心理教育相談室紀要 (7), 21-30, 2015-03-31)
自己アピールの苦手意識に対するアサーション・トレーニングの効果ー「自分のこだわり」を語るワークを取り入れてー

著者情報

SELF

北里大学医療衛生学部出身の医療系ライターを筆頭に、精神衛生やメンタルケアに特化した記事を得意とする。学術論文に基づいた記事を多く手掛けている。

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