- 「課長に昇格したら責任が増えて、今までよりも仕事がつらく感じる」
- 「部下のマネジメントに加え、上層部からの叱責がつらい」
- 「やることが増えて勤務時間が長くなっていく」
たとえばサラリーマンでは、課長・部長クラスは管理職であると同時に更に上の管理職にマネジメントされていることから中間管理職とも呼ばれています。中間管理職はストレスを感じる割合が高いポジションであると同時に、メンタル不調を引き起こしてしまう人も少なくありません。
なぜ中間管理職の人はメンタル不調になりやすいのでしょう?また、落ち込んでしまったメンタルをどのように改善すればいいのでしょうか?
目次
中間管理職のメンタル疲れの要因

一般社員に比べ、中間管理職の人は立場上、多方面からストレスを受けることが多いです。ストレスを受ける機会が多い分、ストレスマネジメントの重要性が高いのです。具体的には以下のような要因が挙げられます。
要因1.部下と上司の板挟みになる

「中間」という言葉の通り、中間管理者は常に自分の上司と部下に挟まれた状態で仕事を進めていくことになるので、やりたくないこともしなければならない状況も多々生まれます。
例えば、営業組織の中間管理者の場合、「部下のメンタルを気遣いながら和やかな組織にしたい」と考えていても、上司から徹底的な成果主義であることを求められた場合、自分の意に反した組織運営ができず、ストレスやもどかしさを感じることに繋がります。
要因2.労働時間が長くなりやすい

中間管理者の中には、自分がプレイヤーとして業務を行いつつ、マネジメントを行わなければならないといったプレイングマネジャーである人もいます。今までの仕事が評価された結果中間管理職に就いている人が多いので、プレイヤーとして取り組む仕事のレベルが高く、ただでさえ忙しい上に部下の面倒を見るため、労働時間が長くなりやすいことで、メンタルの不調を引き起こします。
ある大学の研究によると、1日の労働時間が10時間を超える中間管理職の社員は、そうでない社員に比べ、2.4倍〜3倍のストレスを感じることが分かっています。それだけでなく、労働時間が長いことはライフスタイルの悪化を引き起こしやすく、結果として睡眠の量や質も下がるといった悪影響もあります。
要因3.相談できる人が減ってしまう

中間管理職になることで「役職者」という立場になりますので、部下だけでなく上司にも、愚痴や相談事を気軽に話せる人が減ってしまうと感じるケースも見られます。
メンタルが落ち込んだときに誰かに悩みを話すとスッキリすることがありますが、そういった相談がしづらくなってしまうと、ストレスを抱え込み続けてメンタル不調を引き起こしかねません。
要因4.家庭があって逃げたくても逃げられない

一般財団法人 労務行政研究所の調査によると、中間管理者のそれぞれの昇進年齢の標準は係長が32.7歳、課長で39.4歳、部長で47.0歳となっています。男性の平均初婚年齢が31.1歳(※厚生労働省データ)なので、中間管理職の人には家庭を持っている人が多いのです。
たとえば職場の雰囲気や待遇面、はたまたこの先のキャリアを考えたときに転職をしよう考える人もいるでしょう。しかし、独り身ならまだしも家庭を背負う大黒柱であることを踏まえると、転職によるリスクを考えざるを得ません。そうするとストレスを感じたまま働き続けなければならず、ストレス悪化を加速させることに繋がります。
中間管理職を救う5つのストレス解消方法とは?
ストレスを感じやすい環境にいる中間管理職の人は、次のようなことに取り組むことで、メンタルの不調を和らげられるかもしれません。
解消法1.カウンセラーに相談する

人間関係を新しく作ったり、知り合いに弱みを見せたくないという人は勇気を出してカウンセラーに相談しましょう。「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」という資格がある程、中間管理職をメインにカウンセリングを行うカウンセラーは少なくありません。
「カウンセラーに相談なんて大げさ」「気が引ける」なんて思う方もいるでしょう。しかし、悩みを打ち明けるのは関係性の薄い人の方が効果的な場合があります。
関係性のない人に悩みを一から説明していく中で、思考が整理されて心を落ち着かせることができます。また、関係性の薄い人の方が身近な人よりも客観的な視点で悩みを聞けるので、新たな発見や目からウロコの意見を聞くこともできます。
また、今はスマホアプリでメンタルヘルスをケアできる時代です。AIロボと会話しながら心を落ち着かせ、感情を記録することで自身を客観的に見ることができます。使えば使うほどAIがユーザーを理解していくので、より的確なアドバイスをもらうこともできます。人には話しづらいこともロボットになら気軽に話せるメリットがあるので、こういったアプリを使うのも手です。
→ SELF MIND
解消法2.社外の繋がりをつくる

仕事を進める上で社内の繋がりを強めることは重要ですが、人間関係が社内にしかないと視野が狭くなるといったデメリットがあります。そこでおすすめしたいのが、社外のビジネスパーソンと繋がりを作ることです。
社会人サークルや勉強会など、繋がりのきっかけは何でも構いません。仕事のことを忘れて、自分らしくやり取りができる「友人」のような存在を作ることでストレス発散ができ、メンタルの不調も改善されます。
さらに、自分と同じような境遇にいる中間管理職の人同士の繋がりができれば、マネジメントのノウハウを高めることもできるといったメリットもあります。
解消法3.大変であることを上司に話す

相談できる上司が身近にいるならば、悩み事は遠慮なく相談しましょう。
真面目な人ほど、何か物事がうまくいかないと「自分のせいだ」と自己嫌悪に陥る傾向にあります。たとえ他に原因があったとしても自分の力量不足を責めてしまうのです。
もしかしたら仕事がうまくいかないのは人手不足など人的要因かもしれませんし、組織体制かもしれません。適材適所が守られていないのであれば、上長に相談して改善提案をするのもアリです。一人で抱え込むのではなく、周りを巻き込んで改善していくことで、もしかしたら自分と同じように思っていた仲間も声を上げることができるかもしれません。
「めんどくさい人と思われるんじゃないか」「目をつけられるんじゃないか」などと及び腰になるかもしれませんが、そういった場合はまず同僚や部下に話を聞いてみるのもいいでしょう。自分と同じような悩みを抱えている人が他にもいるとわかるだけでも安心感につながります。自分一人だけで抱え込まないことが大切なのです。
解消法4.完璧でなくてもいいことを自覚する

役職に付いているからといって完璧である必要はありません。中間管理職の人間として上手く働けていない自分に罪悪感を感じるのではなく、人には強みと弱みがあり、完璧な人間はいないというようにある種開き直ってみるのです。
足りない知識や経験はこれから身に付けていくことにして、完璧であることに固執しないことが大切です。そうでなければ、溜まっているストレスのダムはやがて崩壊し、あふれ出たストレスを解消することが難しくなってしまいます。ダムに蓋をしてストレスを入れないようにしたり、こまめに発散することで心のバランスを崩さないようにしましょう。
解消法5.ビジネス本などを読む

中間管理職としてあるべき姿であったり、望ましいコミュニケーション方法などが書かれたビジネス本が多く出版されています。そういったビジネス本を読むことで、「中間管理職で板挟みになっている中どのように振る舞ったらいいか分からない」という悩みを解決できるかもしれません。
また、ビジネス本に限らず、読書をすることは目の前の不安から一時的に遠ざけるのに有効だと考えられています。知見やノウハウのインプットだけでなく、マネジメントが不安で眠れないといった状況を改善させるためにもおすすめの行動です。
疲れないためにも自分らしさを忘れずに

将来的に役職をどんどん上げていきたいという人は、中間管理職は避けては通れない道ですが、立場に気負いすぎてしまうと、メンタルの不調を引き起こし、精神的な病気になることもあります。
日本でも最近、終身雇用からジョブ型の採用や副業の活発化など、多様な働き方が注目され始めています。自分の強みを活かしたり、弱みを見せられる場所を作ったりしながら、自分らしさを出せるようになると少しは心が楽になるのではないでしょうか。
Source:
丸山総一郎,河野慶三,森本兼曩
「中間管理者のメンタルヘルスに関する予防医学的研究(第2報)ー部課長における長時間労働のライフスタイル,ストレス及び労働生活満足度への影響ー」