世の中は2種類の人がいます。
積極的な人か、消極的な人か。

積極的に発言したり、積極的に行動したり、アグレッシブに道を切り開いていける人はまぶしく見えるものです。

実は、そんな積極的な姿勢がメンタルヘルスの向上にも繋がることがわかっています。

積極的に友達を作った方がいい?

大勢で乾杯するグラス
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たとえば大学生。
新学期を迎える人にとって、環境変化による心理的ストレスは大きいものです。

  • ・新しい友達はできるだろうか?
  • ・恋人はできるだろうか?
  • ・勉強にはついていけるだろうか?

他にもいろんなことを考えるかもしれません。
日本の国立大学1年生に、生活のどの領域を重要視するかを調査したところ、入学直後において「遊び・友達」に積極的な姿勢を見せた人は、精神的健康を維持する傾向にあったという報告があります。

積極的に動いて自分の居場所を見つける。

どんな活動にエネルギーを向けるのかを自分で決めることが、入学後の大学生にとっては重要な課題であり、大きな意味をもつのです。

プライベートで孤立する中高年たち

雪上でポツンと一人で座っている老人
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一方で、社会人においてはコミュニティ不足が問題となっています。

年齢を重ねるにつれ、友人や知人、趣味の仲間など、 プライベートでの交流の場を持っていない人が多いことがわかっています。それは失業後に顕著に表れます。

というのも、中高年失業者にとって就労中は会社がコミュニティとなっている場合が多く、その背景には会社で長時間労働をしてきたために、物理的にも精神的にも会社以外でのつながりを持つことができなかったことにあると考えられます。

朝から晩まで働いて、休日は家で自分の時間を過ごす。特に近所付き合いなどをしてこなかった人にとって、ある種自分の居場所でもある「会社」がなくなったとき、孤独を感じるようになるのは必然かもしれません。

野原のベンチに一人で座る女性
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失業者やリタイアした人にとっては、仕事がなくなることによって失うのは、所得だけではなく居場所としてのコミュニティもです。このような生きにくさや社会からの孤立が、失業者やリタイア後の人のメンタルにも大きく影響し、うつ病の発症や自殺にもつながるケースがあるというのが現状です。

日々頑張って仕事をしている人にとって、仕事以外にもコミュニティを作るというのはとてもエネルギーのいることです。ただ、コミュニティに参加して誰かと交流することは、孤独や孤立を招かないようにする一つの予防策と言えるのではないでしょうか。

また、今はスマホアプリでメンタルヘルスをケアできる時代です。AIロボと会話しながら自分の心を落ち着かせ、感情を記録することで自身を客観的に見ることができます。話し相手にもなるので、使えば使うほど仲良くなりユーザーを知っていきます。特にコミュニティがない人はぜひ「AIカウンセリング」を試してみてください。
SELF MIND

積極的傾聴法がコミュニケーションのカギ

みんなの話に耳を傾ける打合せ風景
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ところで、あなたの周りには信頼できる先輩や上司はいますか?

人柄がよくて、話しやすくて、頼りになって、尊敬できて……。慕われる要因はいろいろありますが、中でもきちんと話を聞いてくれるという点は欠かせない要素ではないでしょうか。

今、企業における上司や管理職の人達に広く推進されているのが「積極的傾聴法」というコミュニケーション方法です。学術的には主に以下のような意味となります。

  • ・共感的理解
  • ・無条件の肯定的関心
  • ・自己一致

つまり、相手の立場に立って、否定せずに共感しながら話を聞いていくのです。

この積極的傾聴法は、新しい技法を覚えるわけではなく、相手に自らの能力や気づきを促進させる方法のため、現実的かつ実践的に行えます。

とある企業の124名を対象にした管理監督者メンタルヘルス研修後のアンケートによると、「研修の中で、今後自分が職場で活用できそうな内容はなにか?」という設問に対して「積極的傾聴法」を挙げた人が63%で最多だったという結果があります。

理由としては主にこういった意見が目立ちました。

  • 「日ごろの人間関係の構築に役立つ」
  • 「部下との面談で活用できる」
  • 「職場の雰囲気作りに役立つ」
  • 「メンタルヘルス不調者の早期発見につなげられる」

相手の話に耳を傾けるというのはコミュニケーションの基本と言えるでしょう。しかし、その基本に立ち返ることで相手にとっては話しやすい存在となり、周囲から信頼される「人気の上司」となれるのではないでしょうか。

アグレッシブな姿勢で自分の人生を豊かに

話し合う女性たち
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いかがでしたか?

積極性をもって生活していくことには少なからずエネルギーのいることですが、結果として心理的にポジティブな影響を与えることが多いと言えます。

ただ、今日本の若者のチャレンジ精神が失われつつあります。統計数理研究所の日本人の国民性調査では、「多くの経験をしたいか」という設問に対して、1983年時と2013年時の調査結果を比較したところ、イエスと答えた人は2013年時点の方が約1~2割少ないという結果が出ています。アグレッシブな人が減ってきているのです。

時代背景や生活様式の変化もあると思いますが、このまま積極性が失われていくのは悲しいことです。

アグレッシブに動いて人とコミュニケーションをとる。その姿勢が、きっと自分の人生をより豊かにしてくれるのではないでしょうか。

Source:

高橋美保(臨床心理コース)
森田慎一郎(武蔵野大学通信教育部)
石津和子(駒沢女子大学人文学部)
【集団主義とコミュニティ感覚がメンタルヘルスに及ぼす影響 ―日・中・韓の国際比較を通してー】

浅岡章一(福島大学大学院教育学研究科)
【交友活動への積極的関与が入学直後の大学生の精神的健康に果たす役割について】

池上和範、田川宜昌、真船浩介、廣尚典、永田頌史
(産業医科大学産業生態科学研究所精神保健学研究室)
(長崎大学大学院医歯薬総合研究科公衆衛生分野)
【積極的傾聴法を取り入れた管理監督者研修による効果】(産衛誌 2008; 50: 120–127)

朴容九
【データから見る日本人若者の内向き志向性 ―韓中との比較を中心に―
Japanese Young People`s domestic directivity based on data ―comparative analysis between Korea and China―】

著者情報

SELF

北里大学医療衛生学部出身の医療系ライターを筆頭に、精神衛生やメンタルケアに特化した記事を得意とする。学術論文に基づいた記事を多く手掛けている。

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