外に出ない日が続くと、なんだか心が滅入るという時はありませんか?

実は、うつうつとした気持ちにはが関係していると言われています。

日光がなぜメンタルに効果的なのか

肉体と精神の健康状態の維持には、日光が重要な役割を果たしていることが様々な研究で明らかになっています。

人体には、紫外線を浴びることでビタミンDを生成する機能が備わっています。ビタミンDは、骨や歯の形成にとても重要な役割を果たしており、摂取することで骨粗しょう症や、自己免疫疾患を防ぐことにつながります。

また、日光を網膜で感じることにより、体内時計の調整を行うという機能があります。実は人の生活リズムは24時間ではないという研究結果も発表されており、環境によっては毎日1時間ずつ起床と就寝の時間がずれていくことになります。

これを防いでいるのが網膜からの日光の受信です。日光を受けることで脳が昼夜を認識し、私たちの生活リズムを外的環境に合わせた24時間に調整しているのです。

冬は引きこもりになりやすい?日光不足に要注意

日に当たる葉
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夏は強烈な日差しが照りつけ、冬の日差しは穏やかで温かみを感じられます。しかし、冬の柔らかな光は体内リズムの調整の観点でいうと少し厄介です。

というのも、季節性感情障害という、秋から冬になるとうつ症状が現れる一種の感情障害が存在します。

多くの動物は、秋にたくさんエサを食べ、冬になると巣穴に引きこもり冬眠を行います。冬眠中は活動せず、陽の光にも当たらない生活を送るわけですが、実は人間にもこれに似たバイオリズムが現れることがあるのです。

原因は、気温日光の弱さです。

米国での全国的な調査によると、緯度が高くなればなるほど季節性感情障害を持った人が多いことがわかっています。日本でも、冬季の札幌、つくば、那覇の3地点で日光浴によるビタミンDの生成時間についての研究が行われました。

夏場では、1日に必要な量のビタミンDの生成には3分から5分で、地域によって大きな差はありませんでした。しかし、12月になると那覇では7.5分、つくばでは22.4分で生成されるところ、札幌では76.4分もの日光浴が必要という結果が出たのです。

時期や地域によって大きな差があることがわかります。寒い地域ではそれだけ日差しも弱く感じられるため、冬に気分が下がる原因として気温と日光が関係していると言えます。

「高照度光療法」でうつ病を克服

電球のライト
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実は、季節性感情障害の治療法として、高照度光療法と呼ばれる方法があります。具体的な方法としては以下です。

患者は、毎日1〜2時間、一般家庭の蛍光灯よりも強烈な光を浴びることができる特殊な部屋で1週間ほど生活します。網膜に光が届くことが重要なため、患者は1分ごとに20~30秒ずつ光を眺めるというものです。今では医療技術も発展し、このような特殊な部屋で体験しなくとも高照度光療法を再現できる照明が開発されています。

森で日光に手を伸ばしている
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ちなみに、高照度光療法は季節性の抑うつ症状のみでなく、一般的なうつ症状の人にも効くという報告もあります。

ある研究では、抑うつ状態で薬が効かず、食欲不振や睡眠のずれ、平均睡眠時間が12時間という状態にあった患者が、高照度光療法を始めて1週間ごろから抑うつ症状が軽快し始めたという結果が出ています。さらに、2週間後には散歩に行けるようになり、4週間後には訴えもほとんどなくなったというのです。

これはつまり、日差しを浴びると気分が良くなるという感覚は、科学的に根拠のあるものであると言えるのではないでしょうか。

日光を効果的に取り入れる方法

方法1.カーテンを開ける

カーテンが少し空いて光が漏れている
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天気に関係なく、起きたらまずはカーテンを開けましょう。窓の前に立ちカーテンを開けることを生活のルーティンの中に組み込むのです。

日が落ちて夕方になるまでカーテンを開けておくと、昼夜を身体が認識し、24時間の生体リズム周期を保つことができます。

また、カーテンを開けるついでに窓も開けて換気するとより効果的です。新鮮な空気を取り入れることで室内のCO2濃度を下げ、脳に酸素を行き渡らせることで集中力が上がります。冬場なら、新型コロナウイルスやインフルエンザをはじめとするウイルス対策にもつながります。

方法2.散歩をする

歩いている足
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散歩などの有酸素運動は心と身体の健康を守るために有効です。
晴れている日はもちろん、曇っていても日光の恩恵を受けることはできます。体内でビタミンDを生成されれば骨や歯の形成に役立ちます。

また、散歩によって運動不足を解消することで筋肉のこわばりを和らげ、肉体由来の精神的不健康も解消される傾向にあります。体を動かすことで憂うつさも軽減できるのです。

プールサイドで夕日を浴びている女性
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日光を浴びてメンタルにいい生活を

いかがでしたか?
健康な日々を送るためにも、積極的に太陽光を取り入ることをおすすめします。

また、今はスマホアプリでメンタルケアができる時代です。
アプリ上のAIロボと会話をすることで日々の健康状態が記録され、ロボがユーザーのことを覚えていきます。続ければ続けるほど的確なアドバイスやストレス解消法を提案してくれるので、会話するだけでストレスの軽減が期待できます。

室内から出ることができずに日の光を浴びるのが難しいという方は、こういったアプリを使うのも手です。
SELF MIND

メンタルはあなたの行動次第で回復できます。より良い生活を送るためにも、困った時にはこういった手法を試してみてはいかがでしょうか。

Source:

村上 純一、山田 尚登
「光と気分」(照明学会誌 2002年 86巻 6号 p. 378-380)

亀井 雄一、榎本 哲郎、秋山 幸長、内山 真,大川 匡子,浦田 重治郎
「高照度光療法が有効であった非季節性うつ病の1例」(医療, 1998年 52巻 10号 p.614-617)

中島英彰宮内正厚
「体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定」(筑波研究学園都市記者会配布 2013年)

著者情報

SELF

北里大学医療衛生学部出身の医療系ライターを筆頭に、精神衛生やメンタルケアに特化した記事を得意とする。学術論文に基づいた記事を多く手掛けている。

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