新型コロナウイルスの影響で家で過ごす時間が多くなった分、家で食事をする機会が増えた人も多いのではないでしょうか。

実は食事には、気分を上げる手段として大きな役割を担っています。

もしも日頃の食事への一工夫によってメンタルヘルスの維持・向上が期待できるとしたら?

ここでは、そんな食事への工夫でメンタルにどんな影響を与えるかについてご紹介します。

うつ病予防にはバランスのいい食事が大事

・栄養不足による精神的悪影響とは?

料理やグラスがテーブルに並んでいる
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私たちが食事によって栄養素を摂取しているのは、肉体面だけでなく精神面の健康のためでもあります。

生命活動の中枢である脳は、精神機能を司っています。多くの栄養素を必要とするため、脳の活動は摂取された栄養素に大きく左右されます。脳に必要な栄養素が不足すると、具体的には以下のような症状が現れます。

  • 頭がボーッとする…低血糖による脳の糖質不足が原因
  • 痙攣・幻覚障害…神経の働きに必要なビタミンB群の欠乏が原因
  • イライラ…脱水や水中毒などにより電解質のバランスが崩れることが原因

・タンパク質やビタミンB群で脳を安心させよう

サラダが守られている皿
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仮にうつ病などの精神障害を患っている場合、食欲減退や摂食障害など食行動の異常が発生すると、精神症状の悪化はより顕著になるおそれがあります。

これらを防ぐためには、なるべく栄養が偏らないようにバランスよく食べることが大切です。特に、身体を構成しているタンパク質や、神経の働きに必要なビタミンB群は重要な栄養素と言えます。食事で摂りづらい場合はサプリメントなどを活用するのも手です。

また、食事が不規則になったり食事の時間が空いたりすると、脳は生命の危機を感じ、次の食事でたくさんの栄養を蓄えようとします。脳を安心させるためにも、食事の時間は一定にして、消化の負担をかけないよう夜遅くの食事は避けるのが賢明です。

ナッツやオリーブオイル、和食はストレス解消に効果的

味噌汁や漬物などの和食
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日本には、魚や野菜を中心とした料理が多く存在します。

「一汁三菜」という表現があるように、日本食の基本的な構成である主食、汁物、三菜という献立は、身体に必要な栄養素をバランスよく摂取することができます。

他にも、健康に寄与する食べ物といえばイタリア、スペイン、ギリシャといった地中海沿岸の食事があります。豆やトマトをふんだんに使うレシピが特徴的ですが、この地中海沿岸諸国の食事にミックスナッツオリーブオイルを摂取することで、心身にどのような変化が現れるかについての実験がヨーロッパで行われています。

結果としては、食事にミックスナッツを追加した群のII型糖尿病患者は、うつ病の発症リスクが41%低下したという報告があります。

うつ病時の身体には軽度の炎症や代謝障害が起きており、野菜や豆類、魚、そして赤ワインといった食材には抗酸化作用があり、うつ病の症状改善に効果があることが科学的にも実証されているのです。

うつ病から心を守るベリー類

手のひらに乗ったベリー類
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ノルウェーやフィンランドで多く食されているベリー類にも健康効果があることがわかっています。

ラズベリー、ブルーベリー、コケモモなどのベリー類には、抗酸化作用をもつ物質であるポリフェノールが詰まっています。このポリフェノールには、うつ病の時に増加する炎症マーカーを低下させる働きがあるのです。

特にブルーベリーは用途が広く、1日3分の1カップ、1回分で80g食べれば病気のリスクが減るという報告もあります。

「噛むこと」自体がストレスケアになる

オレンジを噛んでいる女性
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また、噛むという行動そのものにも良い影響があることがわかっています。

人は、精神的にストレスを感じると、脳内でドーパミンの分泌が過剰になり、不安感や恐怖感を感じやすくなります。しかし、噛むことで脳の一部の血流が増加し、CCK-8というホルモンが分泌されます。

このホルモンはドーパミンによる効用を抑える働きがあり、不安感や恐怖感を抑制する働きがあるのです。この他にも、CCK-8には記憶力を促進する効果もあります。

手っ取り早く噛むことの恩恵を受けられるのはガムです。摂取カロリーを抑え、目を覚ます効果もあるので、常備しておくと役に立つのではないでしょうか。

もちろん、娯楽の一つとしてもおすすめ

にぎやかな食事風景
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近年、食の欧米化や加工食品の摂取過多、または野菜の摂取不足などによってメンタルヘルスのバランスを崩す人が多いという報告もあります。

栄養バランスを考えた食生活を送ることはもちろん、不規則な生活を改めるだけでメンタルケアにつながることもあります。

新型コロナウイルスの蔓延により、家族や友人、恋人など誰かと一緒に食事をするというのが難しくなってしまいましたが、SNSなどで食生活を共有するというのは食生活改善のための打開策の一つとなり得ます。

一人で食事をする孤食は意識やモチベーションを維持するのが難しいですが、誰かと食を共有すれば楽しみにもつながります。

窮屈な生活の中で、身も心も健やかに過ごせるように、ぜひ心に効く食事を取り入れてみてはいかがでしょうか。

Source:

船越 正也
「咀嚼とメンタルヘルス」(日本咀嚼学会雑誌 1996 年 6 巻 1 号 p. 35-38)

松岡豊、浜崎景
「食からメンタルヘルスを考える」(精神神経学雑誌, 2016)

投石保広、佐橋喜志夫、船越正也
「ガム咀嚼が自覚的覚醒度に及ぼす効果」(日本咀嚼学会雑誌 1993年 3巻 1号 p.23-26)

特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構・コンボ

著者情報

SELF

北里大学医療衛生学部出身の医療系ライターを筆頭に、精神衛生やメンタルケアに特化した記事を得意とする。学術論文に基づいた記事を多く手掛けている。

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