あなたは普段、どれくらいの時間インターネットを見ていますか?
動画を見たり、SNSを使ったり、お買い物をしたり、調べものをしたり……。スマートフォンやパソコンがあれば、いつどこでも見られるので便利ですよね。
今や生活に欠かせない存在のインターネットですが、使いすぎることでインターネット依存(通称ネット依存)に陥り、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすリスクがあることがわかっているのです。
目次
SNSの日常化はインターネット依存症のはじまり
「ネットの見過ぎはよくない!」と漠然と思ってはいても、具体的にどんな悪影響を及ぼすのかあまり知られていないかもしれません。
2014年の総務省通信動向調査によると、国内のインターネット個人使用率は82.8%で、6~12歳の世代で71.6%、13~19歳、30~39歳で97.8%、一番多い20~29歳ではなんと99.2%にも及びます。
また、総務省情報通信政策研究所による高校生15,191名への調査では、平日1日あたりの平均インターネット利用時間はパソコンで38.8分、スマホなどのタブレットで161.9分という結果が出ています。 こう見るだけでも、多くの時間をインターネットに使っているかがわかりますね。
冒頭でも述べましたが、現代はSNSやオンラインゲームなど、インターネットを使えばいつでも簡単に人と繋がることができるようになりました。
この「いつでも簡単に」というのが極めて重要で、いつでも利用できるということは、利用したくなればすぐに手が出せてしまい、この手軽さが自覚なくインターネットに時間を費やしてしまう要因とも言えます。
あなたは大丈夫?自覚なくインターネット中毒に陥る人たち
今やインターネットでは数多くの動画が配信され、無料で楽しめたりもします。
また、SNSでは自分の投稿に反響があれば嬉しくなり、逆に反響がないと落ち込んだり。ちょっとした言葉の使い方や受け取り方次第で、炎上するなんていうこともあります。そうすると何が起こるでしょう?
ネットから離れられなくなるのです。
何をしててもずっと気になってしまう。
簡単に触れられるだけに尚更です。
2015年、とある大学・短期大学部の学生138人に調査を行ったところ、ネット依存傾向にある学生は58%だったそうです。また、このうち「自分がネット依存しているという自覚があるか」という質問ではこのような結果が出ています。
- ・そう思う:65.3%
- ・どちらとも言えない:18.1%
- ・そうは思わない:16.7%
ネット依存傾向にあるにも関わらず、1~2割の人が自覚がないのです。
自覚のないままネットにのめり込み、気づいたら心身を蝕むような依存症になっていたというケースは少なくないのです。
インターネット依存症の4つの種類
こういったインターネット依存には、主に4つの種類があります。
- 過剰使用(時間を忘れて基本的な活動の無視と関連)
- 離脱(インターネットができないことでの怒り、緊張、抑うつ状態など)
- 耐性(より良い設備、ソフトウェア、より多くの時間を必要とすること)
- 悪影響(口論やウソ、業績悪化、社会的孤立、疲労など)
これらは日々の生活に影を落とすものであり、特にネット使用頻度が高い学生たちにとっては授業の出席率や進級の失敗率にも悪影響を及ぼします。
さらには心が不安定になり、不眠や栄養障害を起こしたり、人との対立・孤立を招く原因にもなっているのです。また、男子大学生ではネット依存度が高いほど歩数の減少も認められています。
・ネット依存症のうつ病化事例
以下はゲーム好きの小学生男子のケースです。
親の管理などで保たれていたゲーム時間が、中学生になって自分でスマートフォンを持ち、友達から勧められてオンラインゲームを始めると次第にのめり込むようになりました。やがて食事や勉強がおろそかになり、深夜までゲームを続けるあまり朝起きられなくなり、だんだん遅刻や欠席を繰り返すようになっていきます。
そうなると徐々に学校にも行きづらくなり、退学か転校を考えるようになります。学校にいかない時間が増えればオンラインゲームの時間も増え、そのうち課金をするようになり、親のクレジットカードを使って数百万を使い込む。果ては罪悪感や自己嫌悪に陥りうつ病を発症してしまいます。
あくまで一例ですが、インターネットに依存することでストレスが溜まり、不眠や体調不良などメンタルや肉体への悪影響があることがわかっています。
下記の表は、具体的なインターネット依存症の症状です。
ネット依存症を克服するための「節ネット」とは?
一般的に、アルコール依存や薬物依存では断酒・断薬を目標とすることが多いですが、ネット依存の場合はインターネット禁止ではなく、節度を持ったインターネット使用(=節ネット)が推奨されています。インターネットが生活必需品になっているのが大きな理由となっています。
たとえば、家庭内のネットを切断すると、連絡がつかなくなる上に他の家族も不便になってしまいます。また、ネットを禁止にした場合の怒りや情緒不安定さが家庭内暴力へと向かわせることも少なくない点、節ネットをしながらの社会生活を営むことが可能な場合が多い点などにおいて、禁止にするより節制して使っていくこと望ましいとされています。
専門機関へ受診することが改善・克服のカギ
日本より早くインターネットが普及した韓国では、オンラインゲームが原因とされる死亡事故や自殺、不登校などが相次ぎ、政府を中心に
- ・専門相談機関の設置
- ・若年者に対する深夜のインターネットシャットダウン制度
- ・レスキュースクール(治療キャンプとその後のアフターフォロー)
などの対策を取られるようになりました。
日本でも、たとえば久里浜医療センターでは、2011年から「ネット依存治療研究部門」を立ち上げて診療をしています。必要に応じて身体検査(採血、心電図、骨密度、MRI、脳波、視力・体力測定など)や心理検査を行う他、
- ・週2回のインターネット依存者専門デイケア
- ・個人・集団認知行動療法
- ・合併精神疾患
などの治療がされています。
また、家族に対しては家族会を開き、ショートレクチャーや家族間の話し合いの場を設けたりしているケースもあります。うつ病を合併した人には薬物治療も行われています。薬の投与によってうつ状態が改善された事例もあるので、深刻な場合は専門機関への受診をおすすめします。
さらにもう一つ。
今はスマホアプリでメンタルヘルスをケアできる時代です。AIロボと会話しながら心を落ち着かせ、感情を記録することで自身を客観的に見ることができます。専門機関にかかるより安価で、いつどこでも相談ができるためメリットが多い「AIカウンセリング」を試してみるのも手です。
→ SELF MIND
SNSやネットと上手に付き合おう
平成29年度版「情報通信白書」によると、2010年は10%未満だったスマートフォンの世帯保有率が70%を超え、13~19歳で81.4%、20代では94.1%にまで上っています。
便利な世の中になっていく反面、メンタルヘルスや肉体への健康被害も増えているのが現状です。かといって、インターネットが悪者というわけではありません。
SNSやインターネットと上手に付き合い、適度な距離感を保って使用できるかどうかが大切です。
いつまでも健康でいられるためにも、自分を客観視する姿勢が大切なのかもしれません。
source:
片山友子、水野(松本)由子
【大学生のインターネット依存傾向と健康度および生活習慣との関連性 】 2016 年 43 巻 6 号 p. 657-664
中山秀紀
【 若者のインターネット依存(<特集>現代の若者のメンタルヘルス) 】 2015 年 55 巻 12 号 p. 1343-1352
澤井智哉、福岡欣治
【 大学生のインターネット利用動機とインターネット依存傾向の関係―自己制御および孤独感との交互作用を含めて― 】