「考えないようにする」は逆効果?ストレスに打ち勝つための思考法

考えないようする

「仕事でミスをして怒られてしまった」
「恋人と別れてしまった」
イヤなことや悲しいことがあった時、一刻も早くそのストレスから逃れるために、「考えないようにしよう」「頭の中から追い出してしまおう」と躍起になっていませんか?

もちろん、ストレスから解放されるためにその原因となっている事柄を意識しないこと、忘れることは有効です。ただ、厄介なことに人間の思考というものは、忘れたいと思ったことを簡単に忘れてしまえるほど単純ではないようです。

考えないようにすることは難しい

人間は、何かを「考えないようにしよう」「忘れよう」と強く意識すればするほど、その対象が思考に侵入し、思考の抑制が困難になるということが研究によって明らかにされています。

これは思考抑制の逆説的効果といわれ、たとえば禁煙中の人が「タバコのことを考えないようにしよう」と意識すればするほど、タバコのことで頭がいっぱいになり、コンビニに行くたびにタバコの棚に目をやってしまったり、喫煙所でタバコを吸う人の姿がいやに目に入ってきたりします。

また、誰かに「この話は絶対に秘密だから、誰にも話さないでね」と言われれば、かえってそのことばかり頭に浮かんで、誰かに話したくなってしまうこともあります。

「意識してはいけないこと」をどうしても考えてしまうことで「自分は意志の弱い人間だ」と自己嫌悪に陥ってしまうこともあるかもしれません。しかしそれは本来、個人の意志のチカラによるものではなく、人間の思考のメカニズムの問題なのです。

うまく「考えない」ための3つの思考テクニック

考えないようにしようとすればするほど考えてしまう。
それどころか「考えたくないこと」で頭がいっぱいになり、ストレスで心がすり減っていく……

そんな負のループから抜け出すためには、どうすればいいのでしょうか。
考えたくないことを自然と考えないようにするための方法を紹介します。

考えない思考のテクニック

1)「考えてはいけない」という意識を弱める

ここまでに述べたように、人は「考えてはいけない」と意識すればするほど、そのことが頭から離れなくなってしまうもの。まずは、「考えてはいけない」という意識を弱めることが大切です。

「絶対に考えてはいけない」という課題を達成するためには、自分で自分の思考を厳しく監視する必要があります。
しかし、常に「〇〇のことを考えてはいけない」と意識することで、思考の中には常に考えたくない対象が存在することとなり、結果として「常に〇〇のことを考えている」状態となってしまうのです。

ストレスの要因となる思考を完全に断ち切るのは容易ではなく、時間のかかるものです。いきなり「全く考えてはいけない」という高いハードルを自分に課さないようにしましょう。

2)思考を体系化する

ストレスの元となっている思考を漠然と捉えるのではなく、自分の中で整理して、わかりやすくまとめることも大切です。

たとえば何かイヤなことがあってイライラしてしまった時、頭の中ではどうしても印象の強いイライラした場面だけを切り取って思い浮かべてしまうもの。
そんな時は、イライラする前に何をしていて、自分がどういう状態だったのか、どういう状況でイライラしてしまったのか、どのような対処をすればよかったのか、など客観的な視点から体験や心情を分析してみましょう。そうすることで思考が整理され、気持ちが落ち着く場合もあります。

この体系化を繰り返すことで、徐々にポジティブな視点が加わり、受け入れやすい思考に変わっていくこともあるでしょう。

「物事を細かく分析する」という、一見「考えないようにする」とは真逆のプロセスが、結果として思考から受けるストレスを分散させ、イヤな思考からいち早く解放されることに繋がるのです。

3)代替的思考を取り入れる

同時にいくつものことを考えるのは、誰にとってもなかなか難しいものです。
つまり、考えたくないことを考えないようにするためには、代わりに何か他のことを考えればいいというわけです。ネガティブな思考で頭がいっぱいになってしまった時は、それをただ考えないようにするのではなく、楽しいことや嬉しいことに意識を向けることで自然とネガティブな思考を頭の中から追い出すことができるのです。

この代替的思考を習慣化することができれば、ストレスを感じた時に意識しなくても「考えないようにする」ことができるかもしれません。

思考を言葉にしてみよう

ここで紹介した3つの思考法を実践するために有効な手段として、自分の感情や思考を「開示」するという方法があります。

自分の経験や心情、誰にも話したことのない体験を開示することで、メンタルヘルスに劇的な効果が認められたという研究結果が数多く存在します。

ここで言う「開示」は、必ずしも他人に公開される必要はなく、筆記や発話によって自分の心の奥底にある思考や感情を自由に表出することが重要とされています。

つまり、誰にも見せることのない日記や、自宅での独り言でもいいので、自分の思考を言葉に変えて吐き出してしまうということです。

漠然とした感情や思考に「言葉」という形を与えることで、
1)「考えてはいけない」という意識の弱化
2)思考の体系化
3)代替的思考を生み出す
この3つの思考法を自然と実践することができるのです。

忘れたいことを忘れるために

忘れること

早く忘れたいことを何度も思い出してしまう時、ネガティブな思考で頭がいっぱいになってしまった時は、無理にそのことを考えないようにするのではなく、言葉や文字に変えて吐き出してみましょう。

まずは自分の思考としっかり向き合うことが、考えたくないことを考えない、そしていつか「忘れる」ための近道なのかもしれません。


Image:Unsplash
Source:

「思考抑制の影響とメンタルコントロール方略」

(木村晴 Japanese Psychological Review 2003,Vol.46)