- 「あの人はおもしろい」
- 「ユーモアがあるね」
あなたの周りにそんな人はいませんか?
職場や学校、友人、家族、その他多くのコミュニティにおいて、人とのコミュニケーションは避けられません。そんな中、ユーモアによって笑いを交え、場を和ませながらコミュニケーションをとることができれば、楽しい時間を共有でき、なおかつ円滑な人間関係を築くことが可能です。
ユーモアには人間関係のストレスを軽減させ、メンタルヘルスの改善に効果があることがわかっており、コミュニケーションの秘訣として大きな役割を担っているのです。
知っておきたい4つのユーモアとは?
ユーモアとは多様な概念をもつ言葉で、捉え方は様々です。
ユーモアとは、他者から面白いと判断され、楽しいという感情や笑い、微笑みを生み出すようなすべてのコミュニケーションである。
Robinson,V.M(1978)
ユーモアは、滑稽で面白い、あるいはばかばかしく不調和な考えや状況、出来事に対する認知や表現、鑑賞に関連したすべての事象のことである。
Martin,R.A.,&Lefcourt,H.M.(1983)
このように、概ね面白さや可笑しさをもたらす表現やコミュニケーションのことを指しています。
さらに突き詰めると、ユーモアは主に
- 「攻撃的ユーモア」
- 「遊戯的ユーモア」
- 「自己破滅的ユーモア」
- 「支援的ユーモア」
の4つに分類されます。
1.攻撃的ユーモア
攻撃的ユーモアとは、主に皮肉やからかいといった他者を対象にしたユーモアです。他にも毒舌や風刺、ブラックユーモア、嘲笑などを含み、優越感やカタルシスを得る効果があるとされています。
相手を攻撃したり中傷したりするという点でネガティブなイメージとして捉えられがちですが、相手との心理的な結束が強くなるに従って「自分はあなたをからかえるほど親しみを感じている」という間接的メッセージを含むため、特に仲の良い相手には心地よさを感じさせることもあります。
もちろん、使い方によっては他者を傷つけてしまう恐れがあるため、攻撃的ユーモアを扱うには注意が必要です。
2.遊戯的ユーモア
遊戯的ユーモアとは、ダジャレや言葉遊びなど、主に日常のささいな出来事について表出されるものを言います。
陽気な雰囲気を醸し出し、自己や他者を楽しませることを動機づけとして表出したり、内容自体にはあまりメッセージ性のないものなどは遊戯的ユーモアと言えるでしょう。
遊戯的ユーモアは気分や雰囲気を明るくする側面があるため、気分転換したいときなどに効果的です。
また、攻撃的ユーモアと違って相手との距離感にかかわらず使うことができる手法なので、コミュニケーションを図る上で重宝しそうです。
3.自己破滅的ユーモア
自己破滅的ユーモアは、字から連想されるように自分自身を過剰に攻撃することで表出されるユーモアです。自虐などもこれに含まれます。
研究によると、自己破滅的ユーモアは、周囲にいい印象を与え円滑な人間関係を構築できる可能性があるとしているものの、過剰な自虐により精神的不健康を招き、自尊心や幸福感の欠如につながるリスクも示されています。
自分を笑いの種にすることで誰も傷つけず、人間関係に亀裂を生じさせるようなおそれがないので有益な手法と言えますが、過剰な自虐は逆効果になるので要注意です。
4.支援的ユーモア(例文つき)
支援的ユーモアは、自己客観視によって自分を含む状況から表出されるものです。
自分の失敗を笑いに変えることで、本来ストレスとなりうる原因をプラスの要素に変えられるので健康にいいとされています。一見自己破滅的ユーモアと似ていますが、自己破滅的ユーモアは自分を下げることで表出するという点で異なります。たとえば、自分の容姿に自信がない人がユーモアを言った場合を例に見てみましょう。
・自己破滅的ユーモア
「誰にも褒められたことないのに、昨日ねんざして病院に行ったら『これは素晴らしい土踏まずだ』と言われました。私なんて土踏まずくらいしかいいところがないんですよ」
・支援的ユーモア
「誰にも褒められたことないのに、昨日ねんざして病院に行ったら『これは素晴らしい土踏まずだ』と言われました。初めて人に褒めてもらいましたよ。ねんざしてよかった」
このように、支援的ユーモアは物事をポジティブに捉えることが特徴です。
また、支援的ユーモアは自分を客観視し、さらに洞察するのである種の冷静さも必要です。このことから、困難や失敗といった状況において絶望感や動揺による「主体性を失う」というリスクを防ぎ、平常心へと向かわせる効果をもつとされているのです。
研究者の間では、4つのユーモアの中でもっともストレス緩和に効果的なのがこの支援的ユーモアと言われています。
「ユーモア・コーピング」でストレス解消を
このように、ユーモアにも様々な種類がありますが、誰もがユーモアを使えるわけではありません。ユーモアを言いたくても思いつかなかったり、性格的に難しいと思う人もいるでしょう。
そんなときは、誰かのユーモアに触れるだけでも構いません。ユーモラスな環境にいること自体が自身の精神を弾ませ、ストレスケアにつながるのです。
日本の病院では、せん妄(妄想・幻覚などによる精神障害)に悩んでいる患者に対し、看護師が勤務帯のメンバーたちと協力してジェスチャーやアクションを交えながら交代してコミュニケーションをとることで、せん妄の症状を和らげることができたという事例もあります。
ユーモアがストレス低減に効果的なことは多くの研究で明らかにされており、近年はユーモアを使って心理的健康の維持・回復を図るべく「ユーモア・コーピング」というストレス対処法が注目されています。
ユーモア・コーピングとはその名の通り、ストレスに対処する手段としてユーモアを使用することを言い、主には気持ちが和むような言動をとったり、その状況についてジョークを言ったりすることでストレスまたは抑うつの低減を図るものです。
ユーモア・コーピングに対する認知は地域(人種)によって違いがあり、たとえば欧米では、初対面でのユーモア・コーピングとしてジョークを言い合うことで緊張をほぐすといった方法がとられています。
一方日本では、家族や友人といった親しい間柄において笑い合える関係を重要視している傾向にあり、そのような身近な関係内でのユーモア・コーピングが効果的であると考えられています。これは、欧米と日本における文化的差異があると言えるのではないでしょうか。
生活にユーモアを取り入れよう
日々の生活の中で、笑いというのは精神的健康の維持に欠かせない要素です。医学的にも、笑うことで免疫力が上がり、がん予防につながることがわかっているんです。
ユーモアに触れ、笑うことは日々の生活を明るくするための好材料となりえます。
自分の失敗談などを気軽に話してみるも良し、身の回りの状況について何かにたとえてみるも良し、ユーモアが思いつかなければユーモアをもっている人とコミュニケーションをとってみるのもいいでしょう。
日常的にユーモアに触れることができれば、きっと心の健康を保てるはずですよ。
Source:
塚脇涼太(広島大学大学院教育学研究科)、深田博己(広島大学大学院教育学研究科)、樋口匡貴(広島大学大学院教育学研究科)
【ユーモア表出が表現者自身の不安および抑うつに及ぼす影響過程】2011年51巻1号 p.43-51
石原俊一
【対人ストレスユーモアコーピングにおける心理学的健康への効果】
葉山大地(筑波大学大学院(博)人間総合科学研究科)、桜井茂男(筑波大学心理学系)
【ユーモアのストレス緩和効果に関する研究の動向】Tsukuba Philological Research(2005,30,87-97)宮代こずゑ(Kozue Miyashiro)(宇都宮大学)、冨田茉林(Marin Tomita)(宇都宮大学)
【大学生の友人関係における攻撃的ユーモアの効用】2019年度日本認知科学会第36回大会 P2-25
桾本知子(東亜大学)、山崎勝之(鳴門教育大学)
【対人ストレスユーモアコーピングが敵意、意識的防衛性と抑うつに及ぼす影響】心理学研究2011年 第82巻 第1号 pp. 9