プロポーズや記念日などに、バラの花束で愛の告白をする。

あなたは今まで、ドラマやマンガでそんなシーンを見たことはありませんか?

真っ赤なバラに情熱や愛情を感じる人は多いのではないでしょうか。もちろんものの感じ方は人それぞれなので一概には言えませんが、多くの人にとってバラの花束を情熱の象徴としてとらえ、使う側も記号として用意するケースは少なくありません。

見た目以外にも、花には花言葉というものがあります。そういった知識や見た目の印象などを総合的に加味して、花に抱くイメージというものは決まっていきます。

近年、植物をメンタルケアに活かそうとする動きが見られるようになっています。いったい花にはどんな心理的効果や役割があるのでしょうか。

花による印象の違いとは?

ひまわり畑
出典:Unsplash.com

夏に咲く代表的な花である向日葵(ひまわり)。太陽のように大きく咲く向日葵はもっとも人気のある花の一つと愛されています。色によって違いはありますが、一般的な黄色い向日葵の花言葉として「あなただけを見つめる・愛慕・情熱」などがあります。

日本においては、東日本大震災の復興支援プロジェクトの一環で向日葵がシンボルとして取り上げられ、向日葵のように上を向いて笑顔を咲かせようという一種の合言葉のような存在にもなっています。

そんな向日葵がメンタルヘルスにどんな影響を与えるか調査するため、福島県の病院内に花畑をつくって職員や患者、地域住民たちに花の印象を聞いてデータ採取しました。調査対象となる向日葵と比較する花として菜の花とコスモスを使用したところ、花によってメンタル効果が異なることが分かったのです。

1:花による印象の違い

たくさんのコスモス
出典:Unsplash.com

向日葵、菜の花、コスモスの3種類に共通して持たれていたのは「明るい」という印象です。さらに、ナノハナとコスモスには「美しい」という印象が目立ちました。

それに対し、向日葵には「力強さ」「元気が出る」といった印象を持つ人が多く、そういった前向きな捉え方をする人は向日葵に対する感想の約70%にのぼっています。

2:見る人による印象の違い

向日葵畑に咲く向日葵
出典:Unsplash.com

続いて、見る人によって感じ方に違いがあるかどうかという調査です。

見る人の属性を「病院患者」「病院職員」「地域住民」の3つに分けて調査したところ、特に病院患において、向日葵に対して「明るい」や「楽しい」などポジティブな印象を持つ人が多かったことがわかりました。

3:福島県在住者の印象

空に向かって咲く向日葵
出典:Unsplash.com

JR福島駅周辺の対面調査で向日葵の印象を自由に書いてもらうと、病院での調査とおなじく「元気」や「笑顔」といったポジティブな印象が多く目立ちました。

以上3つを踏まえると、向日葵には「明るさ」「元気」というような前向きな印象を与えることがわかります。

津波や原発によって大きな被害を被った福島県の住民においては、精神的ダメージも大きなものです。先の見えない暗闇の中にいる人にとって、太陽のように咲く向日葵はより眩しく見えるのかもしれません。少なからず、向日葵がメンタルにポジティブな影響を及ぼしていることは間違いないと言えるでしょう。

メンタルケアとしての植物の役割

2006年、「芝生」と「ラベンダー畑」の癒し効果について研究したグループがいます。癒し効果を総合的に判断するために、血圧や脈拍などの生理的指標と、印象評価による心理的指標で調査されました。

すると、芝生とラベンダー畑でメンタルヘルスに違いがあることがわかったのです。

(1)生理的指標

出典:Unsplash.com

ここでは神経系と内分泌系の2つのデータを測定しています。神経系からは交感神経に影響のある<血圧>と<脈拍>、内分泌系からはストレスホルモンとの相関関係がある<唾液アミラーゼ>を測定しました。唾液アミラーゼ濃度の減少は、ストレスの減少を示すものとされているからです。

調査の結果、 芝生やラベンダー畑において血圧の高い人(安静時)に血圧の降下が見られ、さらに芝生では唾液アミラーゼ濃度も下がるという結果が出ました。

つまり、芝生とラベンダー畑では気持ちが安定し、特に芝生では心が落ち着きやすい傾向にあるということがわかります。

(2)心理的指標

夕日に当たるラベンダー
出典:Unsplash.com

印象評価を数値化し、14個の形容詞と5段階評価を採用して調べた結果、芝生では「大人しい」「落ち着いた」などの印象が強く、ラベンダー畑では「興味深い」「刺激的な」といった印象を抱きやすいことがわかりました。

これらの結果を踏まえると、植物がメンタルに与える役割として

  • 芝生:「休息」の場所
  • ラベンダー畑:「気分転換」の場所

と言えるのではないでしょうか。

花の役割を知り、メンタルヘルスをケアしよう

出典:Unsplash.com

植物とメンタルケアについてはまだまだ研究の余地があるでしょう。それでも、花や植物が人々の心に明るい光を差すことは紛れもない事実です。

日々の生活において、私たちは少なからず花や植物と関わっています。
公園で遊んだり、学校の花壇に咲く花を観察したり、山や川で自然に触れたりと、植物は私たちにとって身近な存在として捉えることができます。森林浴や川のせせらぎなどがリラックスに効果的なことは科学的にも実証されているので、緑を感じることはメンタルヘルスにおいて重要なのです。

心が疲れたときや癒されたいとき、気分を変えたいときには花に触れてみてはいかがでしょう?花それぞれの役割を理解することで、より効率よく心を癒すことができるかもしれません。心に花を咲かせるためにも、日常に花を取り入れてみて下さい。

また、今はスマホアプリでメンタルヘルスをケアできる時代です。AIロボと会話しながら心を落ち着かせ、感情を記録することで自身を客観的に見ることができます。もし「癒されたい」「気分転換したい」と思ったら、ぜひ「AIカウンセリング」をお試しください。
SELF MIND

Source:
岩崎寛,宇内沙織,塚本隆男
ヒマワリに対する印象評価−メンタルケアとしての有用性」(日本緑化工学会誌 2014年 40巻 1号 p. 251-253)

岩崎寛,山本聡,石井麻有子,渡邉幹夫。
都市公園内の芝生地およびラベンダー畑が保有する生理・心理的効果に関する研究」(日本緑化工学会誌 2007年 33巻 1号 p. 116-121)

著者情報

SELF

北里大学医療衛生学部出身の医療系ライターを筆頭に、精神衛生やメンタルケアに特化した記事を得意とする。学術論文に基づいた記事を多く手掛けている。

著者の全ての記事を見る