メンタルヘルスに効果的!運動によるストレスケア

水泳する男

最近、運動していますか?

高血圧や肥満などの生活習慣病に運動が効果的であることは知られていますが、うつ病やストレス発散に対しても運動が治療的効果をもつことがわかっています。

2011年に行われた北米スポーツ医学会でも、うつ病治療において薬剤に頼らない運動療法は注目されており、学会でも多くの質疑応答がなされました。

うつ病をはじめとする精神疾患に対して、運動がはたしてどういった効果をもたらすのでしょう。

運動は夕方から夜にするといい?

アメリカのうつ病患者99名に対する研究によると、一日1時間の有酸素運動または無酸素運動を週3回、計8週間にわたって行ったところ、うつ状態が改善したという報告があります。

一過性(1日だけ)の運動ではさほど大きな影響はなかったものの、運動習慣のある人たちは深い睡眠である「徐波睡眠」が多く、睡眠が安定していたそうです。

一般的に、眠気は体温が下がり始めるときに強く感じるそうです。運動後の2〜3時間は上昇した体温が下がり、また、夜はメラトニンという睡眠サイクルをコントロールするホルモンの分泌量が増えます。運動と生体リズムが相乗効果を起こすことで眠りやすくなるというわけです。

ちなみに、適度な運動にはジョギングや早足の散歩などがいいそうです。運動ができなくても、ぬるめの湯に浸かるのも効果的なんだとか。

ただし、あまり激しい運動は交感神経が刺激されて興奮してしまうので逆効果だそうです。また、寝る前の運動も身体的ストレスを与えてしまいよくないようです。上質な睡眠を摂るためには、運動の仕方やタイミングも重要だと言えるでしょう。

睡眠不足はうつ病・ストレスの天敵

目をおさえて眠そうな男

ちなみに、睡眠不足とうつ病、もしくはうつ症状の間には非常に強い関係性があるようです。

フィンランドでは、うつ病ではない40,791名を対象に調査したところ、週に5日以上の不眠を訴える人たちが高確率でうつ病を発症するという結果が出ています。

成人の場合、一般的に1日約7時間の睡眠が程良いと考えられており、それより短い、もしくは長い場合には6年後の死亡率が高くなるという結果も報告されています。

慢性的な睡眠不足による悪影響として、

・疲れやすくなる
・集中力や注意力の低下
・イライラする

など、日常生活に支障が出てくるような症状が多いようです。

このような睡眠による心身のストレスを軽減させるためにも、適度な運動により睡眠をうながすことは必要不可欠と言えそうです。

楽しく運動することで、海馬の働きがよくなる

笑顔でフィットネスする女性たち

近年では、過度のストレスが海馬を萎縮させ、さまざまな精神疾患に関与しているとの報告があるようです。しかし、自発的な運動によって海馬の神経細胞の増殖を促進させ、抑うつの低減効果があることが動物実験でわかっています。

ただ、強制的な運動では海馬の神経細胞増殖はあまり促進されず、自発的に行った運動のほうがより効果的であることが研究でわかっています。

とある運動教室に通う17名を対象に、週一回1時間の運動を実施したところ、運動教室を楽しいと感じた人の多くがメンタルヘルスの改善傾向にあったそうです。特に、ヒップホップダンスのカリキュラムに関して高い満足感が示されたんだとか。

というのも、少し頑張れば達成できそうな目標を設定してそれに挑戦するということは、楽しさや喜びをもたらしやすいとされているそうです。ヒップホップダンスの初歩的なステップを用いて無理のない範囲で頑張れる環境だったということが、多くの参加者にとって楽しいと評価された要因なのかもしれません。

つまり、報酬や罰によってコントロールされている状態ではなく、興味や関心をもって運動を行うことが重要だと言えそうです。

メンタルヘルスのためにも、日々の生活の中に少しでも運動を

WHO(世界保健機関)が行った疾病負荷(DALYs:疾病による生命や生産的生活の消失の合計年数の調査)によると、2004年ではうつ病が第3位を占め、2030年には第1位になると予測されています。

誰もが発症する可能性のあるうつ病ですが、運動は睡眠改善や精神的、肉体的にポジティブな効果があり、心身をケアしていく上で有効な手段と言えます。(図1)

時代が進み、交通機関の拡充やインターネットの普及など便利な世の中になるにつれて、人とのコミュニケーションも昔ほど足を使わなくなりました。どんどん省エネになり、本来備わっている運動能力を発揮する機会も減ってきているのではないでしょうか。

そんな省エネで暮らせる時代だからこそ、日頃から体を動かすことを意識するというのは大切な気がします。

忙しいときでも合間にストレッチをしてみたり、運動が苦手な場合でもいつもより少し長めに歩いてみたり、そんな些細な運動の積み重ねが、きっとあなたの健康を守ってくれるはずですよ。

Image:Unsplash
Source:
職場の運動療法うつ病の予防
内田直、我如古雅志、塩田耕平、武田典子、楳沢旬、田代小百合、佐藤大介、阿部哲夫
2011年、第52回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(横浜)

精神疾患患者に対する行動科学を応用した運動療法導入の試み
吉本好延、野村卓生、明崎禎輝、佐藤厚
理学療法学 第36巻 第5号 287〜294頁 (2009年)

回復期にある精神疾患患者を対象とした運動療法の試み
泉水宏臣、永松俊哉、井原一成、中川正俊
体力研究(Bulletin of the Physical Fitness Research Institute) No.107, pp. 15~22(Apr., 2009)