心に効く食事の秘訣とは?

食事の場面

家で過ごす機会が極端に増えた昨今。私たちのストレス発散の手段は大きく制限され、気軽にリフレッシュできる機会も減ってきています。気分のコントロールが難しい中で重要になってくるのが、私たちの生活に欠かせない食事。

基本的に食事は、身体に必要な栄養の摂取を目的とした行動ですが、気分を上げる手段としても大きな可能性を秘めています。

日頃の食事への一工夫は、科学的な観点から見て、私たちの心身にどのように影響するのでしょうか。

心にも栄養を

私たちは食事によって、日々の活動に必要な栄養素を摂取しています。しかし、栄養を欲しているのは身体だけではなく、心も同じだということをご存知でしょうか。

食事で摂れる栄養の中には、精神障害の予防や治療に大いに役立つとされるものが数多く存在しています。食事は身体の健康だけでなく、心の健康にも強い影響があるということが、様々な研究で証明されています。

伝統的な食事に秘められた効果

さんまの塩焼きに、きんぴらごぼう…日本食には、魚や植物を中心とした料理が数多く存在しています。一般的に「一汁三菜」という表現で表されるよう、日本食の基本的な構成である「主食、汁物、三菜(おかず)」という献立は、身体に必要な栄養素を美味しく、バランスよく摂取することができます。

伝統のある、健康に寄与する食べ物といえば、イタリア、スペイン、ギリシャといった地中海沿岸の食事。豆やトマトをふんだんに使うレシピが特徴です。この地中海沿岸諸国の食事に、ミックスナッツやオリーブオイルを追加摂取することで、心身にどのような変化が現れるかについての実験も行われています。

ヨーロッパのあらゆる地域で実施されたこの実験では、この伝統的な食事にミックスナッツを追加した群のII型糖尿病患者は、うつ病の発症リスクが41%も低下したという結果が現れています。

うつ病の時の身体には、軽度の炎症や、代謝の障害が起きています。地中海沿岸の食事にふんだんに使われる野菜、豆類、魚、そして赤ワインも、抗酸化作用によってそれらを防御することができるのです。

うつ病から心を守るベリー類

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さらに、ノルウェー料理やフィンランド料理で供されるベリー類も、小さな果実でありながら、大きな健康効果をもたらします。ラズベリー、ブルーベリー、コケモモなどのベリー類は、抗酸化作用をもつポリフェノールがぎゅっと詰まっています。この抗酸化物質は、うつ病の時に増加する炎症マーカーをしっかり低下させるのだそう。
甘酸っぱい果物はおいしいだけなく、心もしっかり支えてくれるという事実は非常に興味深いです。

今の食事に改善の余地があると感じている方は、上で述べたような食事を少しずつ取り入れてみると、心の健康にグッと効くかもしれません。

「噛むこと」そのものにも効果がある

心の健康には、身体の状態が深く関わっているということは、前述した栄養素の話で述べた通りです。食べる行為に付随する「咀嚼」という行動そのものも、身体、ひいては心の健康にとても良い影響があります。脳機能も当然身体を構成する要素の一部。咀嚼と脳ホルモンの分泌についての関係の研究も、数多くなされています。

人は、精神的にストレスを感じると、脳内でドーパミンの分泌が過剰になり、不安感や、恐怖感などの不快な症状が現れます。「しっかりと噛む」と、脳の一部の血流がグッと増加し、CCK-8というホルモンが分泌されます。このホルモンは、ドーパミンの及ぼす効果を抑える働きがあり、ドキドキ感や恐怖の感情を抑えてくれるのです。
ちなみに、このホルモンには記憶を促進する効果もあるそう。

摂取カロリーを増やしすぎず、噛むことの精神的恩恵を受けるには、ガムがおすすめです。歯にも優しく、目を覚ます効果もあるので、不安を感じた時や眠い時のために携帯してみるのはいかがでしょうか。

もちろん、娯楽の一つとしてもおすすめ

私たちが生活する上で欠かすことのできない食事という行為。それを楽しむために、太古の昔から発展して来たのが料理です。科学的な観点から、食事のメリットについて述べて来ましたが、結局のところ「美味しく食べること」の喜びに勝るものはありません。

料理は食材選びから、好みの味付けや効率的な手段まで、毎日一貫してこだわることができる趣味として、確立されたジャンルと言えるでしょう。

娯楽の手段が絞られている中で、この機会に料理を熱中できる趣味として、こだわってみるのはいかがでしょうか。

食事が、様々な面から人の心に”効く”ということを述べてきました。窮屈な生活の中で、少しでも皆様の生活が彩り豊かに、そして心も身体も健やかに過ごせるように、心に効く食事をぜひ取り入れてみてください。

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Source:
「咀嚼とメンタルヘルス」
(船越 正也。日本咀嚼学会雑誌 1996 年 6 巻 1 号 p. 35-38)

「食からメンタルヘルスを考える」
(松岡豊, 浜崎景 -。精神神経学雑誌, 2016)

「ガム咀嚼が自覚的覚醒度に及ぼす効果」
(投石保広, 佐橋喜志夫, 船越正也。日本咀嚼学会雑誌 1993年 3巻 1号 p.23-26)