あなたはホームシックを経験したことはありますか?

親元を離れ、新たな場所での生活をスタートさせたとき、寂しさや恋しさを覚えることがあります。特に最近は、新型コロナウイルスの影響で実家や地元に帰りづらく、ホームシックになりやすい状況と言えるのではないでしょうか。

ホームシックにかかると、慣れ親しんだ環境が恋しくなり、不安になったり孤独を感じて苦しんだりしてしまいます。

では、いったいなぜこういった感情になるのでしょうか?また、もしホームシックにかかった場合、どのように対処すればいいのでしょうか?

ホームシックになるのは「警戒」するから

女性が机に座り、パソコンで作業をしている合間に思いにふけている。
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私たちは、同じ環境で長い時間を過ごすことにより、周囲に愛着を感じるようになります。新たな環境に身を置くことになれば、文化や言語、人間関係といったあらゆる状況に適応しようと努力します。

しかし、適応できないと混乱し、不安や孤独を感じます。ホームシックとは、そういった愛着や親近感のある環境から切り離される時に働く心理であり、不安や孤独などの強い反射感情を抱くことで起きるものです。

本能的に心や身体が「警戒モード」に入ってしまうと、健康面上でも様々な症状が引き起こされてしまうのです。

ホームシックの症状は主に3つ

駅のホームで一人ベンチに座っている人
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ホームシックの症状は、軽いものから重症なものまで様々なかたちで現れます。身体的、心理的な問題をはじめ、認知行動がうまくいかずに普段の生活に支障を来たすような影響があることも分かっています。

ホームシックの典型的な症状は以下の通りです。

  1. 身体の症状
    ・睡眠と食欲の障害
    ・感染リスクの拡大や胃腸の不調
    ・興奮による身体的不調:頭痛、目眩など
    ・ホルモン分泌の変化による免疫の低下
  2. 認知行動の症状
    ・「帰りたい」という強い望みと、新しい環境への悲観的な視点は、人の認知行動にも影響を与える。
  3. 心理の症状
    ・うつ病
    ・不安
    ・孤独感

このように、ホームシックは様々な症状が複雑に絡み合って現れます。ですので、不調の原因がホームシックであると認識するのが難しいのです。

ホームシックにならないための対処法4選

腰掛けて空を見ている女性の後ろ姿
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ホームシックについては、原因や症状に関する内容が多くある一方、対処法などの研究はあまりされていないのが現状です。

そんな数少ないホームシックの対処に関する研究において、大事なポイントが4つあると言われています。

  1. 新しい環境に慣れ、居場所を見つける
  2. 今までの繋がりを大切にする
  3. 新たな繋がりを作る
  4. 自己投資をする

以下に詳しく説明します。
すぐ活用できるアイディアもあるので、ぜひ参考にしてみてください。

対処法1.新しい環境に慣れて居場所を見つけよう

男性がカメラを持って街を探索している様子。
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たとえば散歩や買い物といったように、何かしらの行動をとることで、視覚や聴覚を通して情報を受信し、脳を活性化させることができます。

散歩であれば、普段は見ないような角度から周囲を見たり、いつもとは違う道を通ったりすることで新しい発見があるかもしれません。また、カメラを持ち歩いてレンズを覗けば、違う世界に触れることもあるでしょう。そういったオープンな心構えでいることで刺激を受け、少しずつ環境に慣れていくのです。

加えて、行ったことのない場所を調べたり、少し足を伸ばしたりすることでさらに世界は広がります。旅や散策はリフレッシュにもなりますし、非日常を体験することで心地よい刺激を受けることができるでしょう。

階段に座って街を見ている男性
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そして、環境に慣れていく過程で落ち着ける場所を見つけることも重要です。

近所のカフェや公園、広場など、ゆったりできる場所があれば、そこが心のオアシスとなり得ます。もちろん自分の家でも構いません。DIYや配置換えといった空間づくりをすることは気分転換にもなり、自分好みの部屋が完成すれば一番のリラックス空間となるでしょう。

見知らぬ土地で心のバランスを崩さないためには、「環境に慣れること」と「避難できる場所を持つこと」が大切です。行動力冒険心をもって環境に順応し、疲れたら落ち着ける場所へ行く。ホームシックを防ぐには、この2つは欠かせないポイントではないでしょうか。

対処法2.家族や友人との関係を深めよう

小包を抱きしめる女性
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新たな環境に身を置くということは、なにも今までの交友関係が絶たれるという意味ではありません。逆に、家族とのつながりや友人関係がより強固になることもあります。

離れていれば直接会う機会も減り、コミュニケーションが希薄になると思われがちですが、電話メールをはじめ、SNSが発達している昨今、ネットを使って手軽にコミュニケーションを取ることができます。

逆に、SNSが一般化している今の時代だからこそ、じっくりと相手と向き合える手紙でのやりとりも面白いかもしれませんし、地域の名産品や特産物などを送ることでいつもとは違うリアクションを得ることができるかもしれません。こういった普段はとらないような連絡手段によって新鮮な気持ちを掘り起こし、それがコミュニケーションの活性化につながるのです。

離れてみて初めて存在の大切さに気づくということもあるでしょう。離れているという事実が、逆に真心を込めたやり取りに繋がるきっかけとなり得るのです。

対処法3.新しい仲間をつくって、孤独感をなくそう

アウトドアで食事を一緒に楽しむグループ
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ただし、あまり既存の関係性を深めることばかりに終始していると、新たな人間関係を築きにくくなってしまうおそれがあります。大切な人たちとのコミュニケーションを大切にしつつ、新たな人間関係を構築していくことも忘れないようにしましょう。

人は社会性をもった動物です。
人間関係を築くことで居場所を見つけ、孤独感を感じにくくなります。これは社会で生きていくうえで重要なことであり、新しい友達や恋人をつくることは、ホームシックを予防するうえでもっとも効果的な対処法と言えるでしょう。

しかし、新しい人間関係を構築するのは多くの人にとって勇気のいることだと思います。一歩を踏み出し、アクティブになれるかどうかがカギです。

たとえばホームシックを感じているのなら、同じようにホームシックを感じている人か、もしくは感じたことがある人に声をかけてみるといいでしょう。職場や学校以外にも、ボランティアや地域の集まり、ネット交流の場、趣味などを通して気の合う仲間を探すことができます。たとえすぐに見つからなくても、焦らず楽観的に取り組んでいきましょう。

対処法4.自己投資をしてセルフケアをしよう

リビングルームで寝転びながらくつろぐ女性
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新たな環境に慣れるまでは、孤独感をプラスのエネルギーに変えていくのも手です。独りの時間は、いわば「自己投資」に最適な時間なのです。

新たな環境で生活をスタートさせるということは、今までの自分をリセットし、新しい自分をつくることでもあります。なりたい自分を思い描き、理想に向かって自分を磨けば充実感にもつながるため、ホームシックの予防になるのです。

また、日記をつけたり瞑想を通して毎日を振り返ると、自分自身への認知が高まり、客観性を得ることができます。これはメンタルヘルスを正常に保つことにもつながります。

運動をしたり食生活に気を使うことは、肉体的にも精神的にも大切なことです。読書をすれば知識を深めることができ、心の栄養にもなります。さらに、興味のある分野の勉強やスキルアップを図るのもいいでしょう。新しい環境に身を置くことをチャンスととらえ、自分に投資するという考えを持つことができれば、効果的なセルフケアが行えます。

「自己投資するなんていうモチベーションはない」「そこまでアクティブになれない」という方は、まずは自分の内面と向き合うところから始めてみるといいかもしれません。どんな人でも、心を鍛えることはできます。心を鍛えることでメンタルヘルスの改善を図るのです。

また、ホームシックにはカウンセリングが有効であることが科学的に分かっています。

自分の気持ちを吐き出すことでストレス発散や思考の整理をすることができるうえ、共感を得ることで安心感を獲得し、アドバイスをもらうことで問題の解決策を見いだすことも可能です。しかし、一般的なカウンセリングは費用もかかり、周囲の目も気になるため相談しようにもなかなか手を出せない人が多いのが現状です。

しかし近年、スマホでできるAIカウンセリングが登場し、対人カウンセリングよりも安価に、かつ時間や場所を選ばずに手軽にできるということで注目を集めています。AIキャラクターがユーザーの悩み聞き、悩みに沿ったアドバイスを送ってくれるというものです。会話をすればするほどユーザーを理解していくので、長く使えばそのぶんユーザーにとって最適な相談相手となるのです。

もし「誰かに話を聞いてほしい」「ストレスを発散したい」という悩みをお持ちであれば、一度試してみてはいかがでしょうか。
SELF MIND

環境や人間関係築くには時間がかかる

顔に手を当てて景色を見ている女性の横顔
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新しい環境に馴染んだり、気の合う仲間を見つけるというのは時間がかかるものです。

心地よく過ごせるようになるには、文化や習慣を知り、人とのかかわりをつくっていく必要があるので、すぐに順応できなくても焦ったり落ち込んだりしないようにしましょう。

ホームシックにならないためには、新しい場所に繰り出す冒険家のように、今までと違うことの刺激を楽しむくらいの気兼ねがあるといいかもしれません。違う環境から来たからこそ見えるものもあるでしょうし、インスピレーションが生まれることもあるでしょう。

新しい自分に出会うことで、きっと今よりさらに人生が豊かになるはずです。

Source:

Ferrara, T. (2020). Understanding Homesickness: A Review of the Literature. Journal for Leadership and Instructions, 8–15. https://files.eric.ed.gov/fulltext/EJ1255848.pdf


Southwick, N. (2021, June 22). 26 Ways to Reduce Homesickness Abroad. Go Overseas. https://www.gooverseas.com/blog/ways-reduce-homesickness-abroad

著者情報

SELF

北里大学医療衛生学部出身の医療系ライターを筆頭に、精神衛生やメンタルケアに特化した記事を得意とする。学術論文に基づいた記事を多く手掛けている。

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