一日6時間睡眠では足りない?意外と気づいていない現代人の睡眠不足

布団で睡眠する女性
各国の睡眠時間の差の表

これは世界各国の睡眠時間を男女で比較した表です。(図1)

ほとんどの地域で女性のほうが男性よりも睡眠時間は長いことがわかります。各国に比べて睡眠時間が少ない国は日本で、男性より女性のほうが睡眠時間が短いようです。

理由の一つとして、日本では女性が家事や育児、介護を担うという傾向が多く、抱える負担が大きいことが考えられます。また、テレビを見たりイベントに参加したりする日本人女性も多いようで、睡眠が不足しがちとの報告もあります。

なぜ日本人女性は睡眠時間が短い傾向にあるのでしょう?

各国の研究等も参考に、睡眠とメンタルヘルスの関係について少し探っていきたいと思います。

「家事や育児は女性の仕事」という意識が根強い日本

「子どもの弁当づくりのために早起きをする」
「仕事から帰って、たまった家事を片付ける」
「夜泣きでゆっくり眠れない」

これらは日本の主婦や働く女性に多く聞かれる声です。
近年は結婚後に共働きをする家庭も増え、管理職に就く女性の割合も多くなってきましたが、未だに男性社会の空気感が残っているのは否めません。

日本における働く既婚女性を対象に調査したところ、社会に出るときは「仕事をさせてもらっている」というような意識を持つ人や、「仕事も家事も疎かにできない」等とプレッシャーを感じる人が散見されたそうです。

もし、共働きで夫が家事や育児に積極的でないとすれば、帰宅しても食事や育児を妻が担うケースが多くなるのは必然でしょう。そうなると、結果的に妻の睡眠時間にしわ寄せがきてしまうのです。

ちなみにスウェーデンでは、男性の収入だけでは家計が回らないことも多く、女性も働かなければならないのが前提になっています。家族において妻が働くのはごく普通のことであり、その分家事や育児を家族で協力する態勢も比較的整っているようです。

また、日本で見られるような、仕事で徹夜することを自慢したり、徹夜することで頑張っているとみなされて評価されたりというような文化はスウェーデンにはありません。仕事のために徹夜するのはバカバカしいと考える人が多く、そういった価値観の違いが女性の睡眠時間の長さに影響していると考えられます。

一日6時間未満の睡眠が続いているときは要注意

布団に横になる睡眠不足少女

睡眠と健康に関しては疫学調査や精神生理学的実験が行われています。

度重なる睡眠不足(睡眠負債)や、社会時刻と睡眠・生理機能等の生物時計の不一致による心身の不調(社会的ジェットラグ)が、日中機能や心身の健康に負の影響を及ぼすことが明らかになっています。

睡眠負債が日中機能に及ぼす影響を調べた有名な実験として、ペンシルバニア大学睡眠・時間生物学研究所の研究があります。それによると、人は4~6時間程度の睡眠を2週間続けると、脳機能は1~2日徹夜をしたときと同じ状態になっているそうです。

働く人にとって、4~6時間の睡眠は日常的という人は比較的多いのではないでしょうか。「若干眠いけど徹夜しているわけでないし、そこそこ寝ている。昼間のパフォーマンスに影響は出ていない」と思う人もきっといるでしょう。

しかし、実は慢性的な睡眠不足の状態下にあり、気づかないうちにパフォーマンスや健康状態が下がっている恐れがあるのです。

上質な睡眠を摂る3つの方法

「寝ようと思っているのに寝れないから困っている」
「寝だめはよくないとわかっていても、寝だめでしか睡眠不足解消の手立てがない」

というように、睡眠不足を解消したいと思ったことはありませんか?

実は、上質な睡眠を摂るためには主に3つのコツがあるようです。

1、平日に20~30分ずつ睡眠時間を多く摂る

もしあなたが休日になると起きられず、平日より2~3時間ほど多く寝てしまうようなら、それを平日に20~30分ずつ割り振るようにするといいそうです。

寝不足を休日にまとめて返済しようとするのではなく、できる限り日々の睡眠を確保することで、睡眠負債と社会的ジェットラグを防止することができるんだとか。

2、毎朝同じ時間に起きる

また、休日にたくさん寝てしまうと、かえって体内時計を狂わせてしまう可能性があるんです。

休日に睡眠を補うのではなく、朝はいつもと同じ時間に起きて太陽の光を浴び、朝食をとって活動をしてから昼寝で睡眠を補うようにするといいそうです。そうすることで体内時計が作動して、社会的ジェットラグを防ぐことができるのです。

ちなみに、昼寝のタイミングや長さは「その夜にしっかり眠れる程度」を心がけるといいそうですよ。

3、野外で過ごす時間を増やす

現代人の多くは、常に人工照明の下で過ごしています。なので昼間は受光量が足りず、一方で夜は光を浴びすぎているのが現状です。

コロラド大学の研究グループによると、被験者にキャンプをしてもらい、キャンプ中に受けた光の量、睡眠、メラトニン分泌量を測定した結果、普段の生活と比べてキャンプ中は日中と夜の受光量のメリハリが大きく、メラトニン開始時刻・終了時刻が早まって睡眠の時間帯が前進したという報告が出ています。

野外でテントが張られている

自然光には、社会的ジェットラグを防いでストレスや疲労を低減させる効果があるのです。

キャンプによる体内時計の前進効果は夜型タイプの人ほど大きいことも示されており、休日に夜ふかしをして翌日寝坊しやすい人には、キャンプは効果が高いと言えそうです。

将来メンタル不調を招かないためにも、しっかりとした睡眠を

ニュージーランドの成人1000名を対象とした調査では、社会的ジェットラグが大きい群ではBMIが増加し、肥満者とメタボリックシンドロームの割合が高いという結果が出ています。加えて、不妊や精神的健康の低下にも影響することがわかっています。

睡眠には、心身を休養させて脳と身体の機能を整える役割があります。

特に女性の場合、月経周期やバイオリズムの変化など男性に比べて生体構造が繊細なため、ライフステージによる生体の変化、およびライフスタイルの変化が睡眠に影響を及ぼしやすいと言えるでしょう。

男女問わず、睡眠習慣や睡眠障害が心身の健康に悪影響なのは明白です。健全に生きていくためにはしっかりと睡眠を摂ることが必要不可欠です。

もし、これを読んで最近睡眠不足かもしれないなと思ったら、いったん生活を見直してみましょう。ちょっとした意識の変化が、きっとあなたの健康を守ってくれると思いますよ。


Image:Unsplash
Source:
【女性の睡眠とメンタルヘルス女性心身医学】
J Jp Soc Psychosom Obstet Gynecol Vol. 24, No. 3, pp. 275-278,(2020 年 3 月)
駒田 陽子(明治薬科大学リベラルアーツ)

【社会的ジェットラグがもたらす健康リスク】
三島 和夫