
あなたの職場に観葉植物はありますか?
身の回りに緑があると、なんとなく癒される気がしますよね。
インテリアとしても重宝される植物ですが、科学的に疲労軽減の効果があることが明らかになっているのです。
目次
メンタルを改善させる「グリーンアメニティ」とは?

2015年、業種の異なる5社(IT、食品メーカー、証券、調剤薬局、不動産)において男女181名を対象にした研究によると、「緊張」「抑うつ」「怒り」「疲労」「混乱」の項目でストレスが軽減されました。
室内に観葉植物を置くことで職場の快適性を向上させ、人々に癒しを与えることはグリーンアメニティと呼ばれ、近年メンタルヘルスケアにおいて注目されている取り組みとなっています。
では、植物を仕事空間に設置することでいったいどのような効果があるのでしょう?
以下、期待できる効果を4つご紹介します。
効果1.空気をきれいにする

NASAによると、「空気清浄研究」を行った結果、観葉植物が空気中の有害物質を吸収することがわかっています。
実は、家具やカーペットからはVOCと呼ばれる揮発性有機化合物(ベンゼン、ホルムアルデヒドなど)が微量に放出されています。これらは人にとって有害物質とされているのですが、オリヅルランやインドゴムノキなどの観葉植物はこれらの物質を除去してくれる作用があるのです。
効果2.フィトンチッドで副交感神経が活性化

植物には、自己防衛のためにフィトンチッドと呼ばれる物質を放出し、微生物や細菌などの有害物質から身を守っています。このフィトンチッドは人間に安らぎを与える効果があることがわかっており、集中力アップや疲れにくさにつながります。
加えて、副交感神経が活性化されてリラックスしたり、ストレスホルモンであるコルチゾールを減少させるといった効果があります。さらに、フィトンチッドには殺菌効果や消臭効果もあるので空気の浄化も期待できます。
効果3.生産性がアップ

日本の大学教授達の研究では、緑視率(視界において植物が閉める割合)と人間のパフォーマンスには大きな関係があることがわかっています。
というのも、緑視率が10~15%のときに人のパフォーマンスが最も向上したという結果が出ており、観葉植物などの緑が視界に入ることでストレス解消や生産性向上につながったと考えられているのです。
ただ、あまり緑の数が多いと逆効果になるので、バランスよく配置するのが望ましいでしょう。
効果4.眼精疲労の回復

愛媛大学の研究によると、30分間のパソコン作業後に植物or壁を5分間見てもらうという動作を繰り返し、植物によって眼精疲労の度合いに差があるかという実験が行われています。
- ①緑色の植物(カポック)
- ②斑入りの植物(ポトス・マッサンギアナ)
- ③赤色の植物(アンスリウム・赤色ドラセナ)
- ④壁
以上4つのカテゴリに分けて眼精疲労の実験を行なったところ、緑色や斑入りの植物といった、華やかさより落ち着きのある植物において疲労が緩和されました。(図)

近年、植物を眺めると大脳皮質の活動が活発になり、疲労が解消することは科学的にも実証されています。
また、網膜にとって緑色は光の波長的に負担が少なく、長時間見ていても疲れにくい色とされており、目を休めるのにはうってつけの色なのです。
光を遮っているのに明るい?

他にも観葉植物には、部屋を明るくする作用があるという興味深い報告もあります。
窓際から入る日光をついたてなどで遮断した場合と、植物を置いて遮光した場合の印象の違いについて調べた実験があります。すると、不思議なことに、窓際に植物を置いた場合は室内の明るさが低下したにも関わらず「明るい」と感じるという結果が出ています。
これは、ついたてなどを置いた場合には「暗い」という印象がはっきり出ることから、植物を置くことには心理的な明るさを呼び起こす効果があるのではないかと分析されているのです。
自分に合った観葉植物で、職場やデスクを整えよう

ひとえに観葉植物といっても、色や形、育て方、健康効果など様々です。
ここで、102人の大学生に多数ある観葉植物を見たときの印象について、室内に置きたい植物として多かったのが以下の3つでした。
- ・ベンジャミン
- ・マッサンギアナ
- ・ゴールドクレスト
これらには「高級」「爽やか」「心が落ち着く」などの雰囲気が感じられており、逆に声が上がらなかった植物としては以下でした。
- ・アケボノクロトン
多くの学生にとって「冷たい」「緊張感がある」といった雰囲気を抱いていたようです。アケボノクロトンは赤い葉の面積の多い植物なので、安らぎを感じづらかったのかもしれません。

いかがでしたか?
観葉植物にはたくさんの種類があります。疲れた時には、オフィスに置かれた観葉植物を眺めてみると疲労が軽減されるかもしれません。
また、職場になければ個人的に小さな観葉植物を用意してみるのもいいでしょう。手元で小さな緑を育てて、その成長を楽しむというのもリフレッシュの一環になるのではないでしょうか。
Source:
浅海 英記、仁科 弘重、難波 亮子、増井 典良、橋本 康
【観葉植物の印象の評価, および, 観葉植物を配置した室内の居住者心理のSD法による評定】(植物工場学会誌/7 巻 (1995) 1 号)
長谷川 祥子、下村 孝
【作業室内の小型および大型植物が作業者の心理に及ぼす影響の比較検討】(日本緑化工学会誌/36 巻 (2010) 1 号)
矢動 丸琴子、大塚 芳嵩、中村 勝、岩崎 寛
【オフィス緑化が勤務者に与える心理的効果に関する研究】