1990年代、日本で大ブームとなったたまごっち。定期的にお世話をすることでキャラクターが成長していく様に、当時多くの人が魅了されました。

その後、画面上にいるキャラクターと会話が楽しめるシーマンや、デジタルモンスター、ポケットモンスターといった架空生物とバーチャルで触れ合えるような、育成要素を取り入れたゲームが数多く登場しています。

近年、バーチャルで触れ合える「バーチャルペット」が注目されています。ペットロボットよりも安価で気軽に触れ合うことができるバーチャルペットは、メンタルヘルスの維持・改善にも期待されているのです。

なぜバーチャルペットが注目されているのか

撫でられている犬
出典:Unsplash.com

ストレス社会と言われている現代、動物とのふれあいがストレス改善効果につながるとしてアニマルセラピーを行なっている施設があります。 海外では、ペットを飼っている人は飼っていない人に比べて年間約20%病院にいく機会が減ったという報告もあります。

ペットを飼うことで精神的安定を獲得し、精神科をはじめとする医療機関にかかる費用が削減されるなど、ペットの飼育やアニマルセラピーにはメリットが大きいと言えます。しかし、アレルギーペットロスで悩む人が多いのも事実です。

ある調査によると、ペットロスを経験した人の約10%が仕事を休むほどの精神状態に陥り、約50%が不調を感じながらもペットロスである自覚がなかったという結果が出ています。

画面に映る犬2匹
出典:Unsplash.com

こういった問題を解消すべく、ペットロボットが注目されるようになりました。

犬やアザラシなど、見た目も可愛らしい動物型ロボットですが、高価格かつメンテナンスが面倒といった懸念があります。

そこで今注目されているのが、仮想空間に存在するバーチャルペットです。

スマホやゲーム機などで気軽に楽しめるバーチャルペッとの触れ合いは、動物やペットロボットと同程度の癒しが得られるのではないかと考えられており、様々な実証実験が行われているのです。

バーチャルペットには疲労回復の効果あり?

自然の中で深呼吸する女性
出典:Unsplash.com

大学生の協力のもと、気分や感情の測定後に4つのグループに分かれて行動すると、どんな気分変化が現れるか実験した例があります。

  • グループA:バーチャルペットと触れ合えるゲームソフトで遊ぶ
  • グループB:パズルゲームなどで遊ぶ
  • グループC:美しい風景動画を見る
  • グループD:静かな部屋でリラックスする

結果的に、バーチャルペットと触れ合うグループでは、「緊張・不安の低減」「抑うつや落ち込みの抑制」「疲労回復」といった点において、他のグループよりも有意に改善傾向が見られました。

動画を見ることでもそれぞれの要素で低減傾向が見られていますが、動画視聴は画面の前に座って映像を見るだけという受動的な行動に対し、バーチャルペットとの触れ合いは、バーチャル・ペットと交流したいと思って積極的かつ主体的に操作をするため、人とバーチャルペットとの間に相互作用が生まれていると考えられます。

とはいえ、疲労回復の面においても、受動的な動画視聴より能動的なバーチャルペットとの触れ合いの方が効果があるというのは興味深い結果なのではないでしょうか。

また、パズルゲームなどのノルマが課されるようなものは、達成できなかったときにかえってストレスを感じるおそれがあります。その点、バーチャルペットと触れ合うようなゲームでは特にノルマのようなものはなく、成長を追ったりただ画面を眺めるだけでも良いという特性があり、他ゲームよりもメンタルに優しいと言えるでしょう。

バーチャルペットのメリット・デメリット

アニマルゲームをしている手元
出典:Unsplash.com

また、新型コロナウイルスの影響で、感染対策の一環として非接触が求められるようになりました。

これはペットやペットロボットにはない大きな特徴の一つで、身体的な安全が確保された上での触れ合いはこの時代にマッチしていると言えます。

他にも、電池交換やメンテナンス、故障のリスクなどが付きまとうペットロボットに比べて、バーチャルペットにはそういった心配はありません。

機械でバーチャル映像を見ている女の子
出典:Unsplash.com

さらには、オンラインでつながることで家にいながら多くの人とコミュニケーションをとることもできるでしょう。

デメリットとしては、熱中することによる電気代の負担や、視力の低下といった健康被害があげられるため、節度をもって付き合うことが大切です。

AIや人工知能で癒しを得る時代へ

スマホに映る猫のイラスト
出典:Unsplash.com

バーチャルペットによるセラピー効果を実証する実験では、キャラクターの可愛らしさや感じの良さが、怒り疲労の低減活気の向上という効果を引き出すうえで重要であると結論付けられています。

そのため、近年はバーチャルペットが持つ特性を生かしつつ、最大限効果を引き出せるようなアルゴリズムの開発が進められています。

今後は、AIをはじめとする人工知能の技術が、バーチャルペットをさらに進化させていくことでしょう。バーチャルならではのメリットを持ちつつ、多くの人にとってバーチャルペットが癒しの存在となりうる日も近いかもしれません。

また、今はスマホアプリでメンタルケアができる時代です。
アプリ上のAIロボと会話をすることで日々の健康状態が記録され、ロボがユーザーのことを覚えていきます。続ければ続けるほど的確なアドバイスやストレス解消法を提案してくれるので、会話するだけでストレスの軽減が期待できます。

AI技術は至る所で活用されています。
バーチャルペットのみならず、こういったサービスに癒しを求めるのもいいかもしれませんよ。
SELF MIND

Source:

佐藤 鑑永、木藤 恒夫
【バーチャル・ペットの癒し効果】(久留米大学心理学研究 第8号 2009)

林里奈(株式会社自動車部品総合研究所)
加藤昇平(名古屋工業大学大学院)
【身体性がバーチャルペットとのふれあいによるセラピー効果に与える影響】

【NPO法人 日本アニマルセラピー協会】

【アイペット損害保険株式会社 ペットに関する調査】

著者情報

SELF

北里大学医療衛生学部出身の医療系ライターを筆頭に、精神衛生やメンタルケアに特化した記事を得意とする。学術論文に基づいた記事を多く手掛けている。

著者の全ての記事を見る