ストレス解消!心の健康に繋がるダンス

ダンス

ダンスは、本質的に生命に内在するものであり、生命活動を再生し、活性化する根源的な営みである。

日本ボールルームダンス連盟 人間とダンス より
URL:https://www.jbdf.or.jp/profile/guideline.html

ヒップホップにジャズダンス、華やかなボールルームダンス、壮大な音楽をバックに舞い踊るYOSAKOIソーラン、スポーツジムなど身近なところからはじめられるエアロビ。古今東西、様々なダンスが人々の間で楽しまれています。「やってみたい!」と興味はありつつも「人前で踊るなんて不安…」と敬遠している方も多いのではないでしょうか。

ちょっと敷居が高く感じるダンスですが、実は心に効く様々な効能があるんです。

ダンスは心を癒す?

音楽に身を任せ、体をのびのびと動かすことの気持ちよさ。その心や体への効能が注目され、ダンスは「ダンスムーブメントセラピー」と呼ばれる病院でのセラピーの一種としても活用されています。

「ダンス」と呼ぶと西欧的なイメージが先行する部分がありますが、盆踊りや神楽だってダンスのひとつ。起源を遡ると、お祝いとして、歴史を伝えるためなど、古来より人々の共同体の結束を高める働きをしています。ダンスの持つ、心を癒し人々を元気にする効果は、大昔から変わらなかったようです。

ウォーキングやエアロバイクもストレス解消に効果的と言われています。それらとダンスと比較してどちらがより効率的にストレスを解消できるかに着目した研究が数多くあり、同じ時間の運動をした場合でも、ダンスの方が効果的だったという結果が発表されています。

寒い季節を吹き飛ばす、特別な体験

北海道で毎年6月に開催される「YOSAKOIソーラン祭り」とメンタルヘルスについて、興味深い研究があります。

5日間のこのお祭りで踊ることのできるステージは、何と札幌市内の25会場。踊りきる体力をつけておくのはもちろん、チームメンバーは一丸となって、この大舞台を迎えます。冬は厳しい寒さを迎える北海道ですが、出場各チームはYOSAKOIソーラン祭りに向けて2月頃から練習を開始します。最初はチームの顔合わせから始まり、段々と踊りをブラッシュアップ。本番に向けてどんどん気分が高まっていく各段階で、心理的・社会的ストレス度に変化が現れます。

チームの顔合わせから1ヶ月ほど経った3月。この時点でチームの人々は、一般的な健康な人より、かなり高いレベルの「活気」を得ることが研究により判明しています。

練習も終盤に差し掛かると、1つの曲を何度も通して踊る練習が行われます。この高い運動強度の動作により、交感神経活動が活発になって神経伝達物質の分泌が亢進されることで快感情が高まります。これらを踊りきった後のリラックスする感覚はひとしお。

そして、チームメイトには、異世代や異業種の人がたくさんいます。異なる価値観のメンバーと一丸となって目標に向かっていく中でたくさんのドラマが起きます。それら1つ1つが自身の中に経験として蓄積されていき、社会的ストレスに対する耐性を高めたり、良い思い出として自分を支える自信となります。

YOSAKOIソーラン祭りは、冬の寒さを吹き飛ばし、新緑の夏を迎える大切なお祭り。一つの大きな目標に向けてダンスを始めてみたいという方にはおすすめのイベントです。

多様な選択肢こそがメリット

YOSAKOIソーランはもちろん、ダンスの良いところは、たくさんの種類があること。
興味のある内容や、自身の身体能力でできそうな分野など、様々な軸でどれにチャレンジするかを幅広く検討することができます。ボディケアのために始める、他の人と競う競技に挑戦し自身の研鑽に努めるなど、自身の目的に合わせて選ぶことができる点が魅力です。

タイミングよく出会った場面で飛び入り参加するのも味なもの。お祭りで時々見かける盆踊りは、そこまでハードではないけれど、みんなで賑やかに体を動かすことそのものがとても楽しいですよね。足や腕を酷使するダンスではなく、自身の身体能力に適したものを選べば体にダメージや疲れが過度に残ることもありません。

ダンスを始めるのに遅すぎるということはない

体を動かす経験もそこまでせずに大人になって、今から初めることに意味はあるのだろうか……と考える方もひょっとしたらいるかもしれません。

ダンスで体を動かすことは、10代20代の学生はもちろん、中高年女性のストレスケアにも役立ちます。

大学生におけるダンスによる感情の変化について、色彩の切り口から研究した論文があります。ある大学でダンスセラピーワークショップを実施し、言葉での表現のみでなく、「今の気分を色で表すと?」という色名の記述による気分の変化を測定したところ、ワークショップの後だと無彩色からより鮮やかな色へと色彩の記述割合が変化しました。無彩色は抽象的な連想を、有彩色は具体的な連想に結びつきやすいとされており、ダンスはその体験を通じて気分や感情の捉え方がグッと具体的になる効果があるようです。

エストロゲンが欠乏する状態となった中高年の女性のメンタルヘルスの維持にも、ダンスムーブメントセラピーが効果的です。
中高年の女性を「普段通りの、とりわけ運動をしない生活をするグループ」「歩く運動をするグループ」「ダンスムーブメントセラピー(DMT)を行うグループ」に分け、ストレスケア効果の比較をした研究があります。
その結果、DMTを行ったグループは、他の2グループより短期的なメンタルヘルス・感情の改善が見られました。
歩く運動をするグループは、DMTを行うグループと運動強度を同じにしており、メンタルヘルスの改善には運動強度のみが関わっている訳ではないという興味深い結果が現れたこととなります。

感情の表現や人と踊る喜びなど、ウォーキングや普段の生活とは一味違う楽しみが、ダンスが人にもたらす健康的な精神へと繋がるのかもしれません。

日常を鮮やかに彩るダンス

心の健康にもたらす効能は様々ですが、何より楽しさが魅力的なのがダンス。
非日常の営みとして挑戦してみると、日常がさらに鮮やかに、フレッシュになるかもしれません。


Image: Unsplash

Source:
「YOSAKOI ソーラン祭り参加による感情とメンタルヘルスの改善」
(侘美 靖, 森谷 きよし。日本生気象学会雑誌 2006 年 43 巻 4 号 p. 117-129)

「大学生を対象としたダンス・セラピーワークショップの効果検証における「気分調べ」と「色名記述」の有効性」
(八木 ありさ。日本女子体育連盟学術研究 2014 年 30 巻 p. 17-28)

「閉経後中高年女性における集団ダンス・ムーブメントセラピーのストレスケア効果に関する研究― メンタルヘルスの改善とストレス関連ホルモンの変化―」
(渡辺明日香。北海道大学大学院教育学研究科紀要 2006年 99巻 p.101-111)