突然ですが、あなたは「見返す」と「仕返し」の違いをご存知ですか?
どちらも怒りが起点となって現れる感情ですが、実は心理学的に「見返す」と「仕返し」という感情には違いがあるのです。
なぜ人は、イラっとしたときに「見返してやる」「仕返しをしたい」というような気持ちになるのでしょうか?
目次
イラっとしたり怒ることのメリットって?

そもそも、イラっとすること自体は悪いことなのでしょうか?結論から言うと、メリットとデメリットの両面があります。
・怒るデメリット
一般的な感覚としては、怒るのはよくないとされています。医学的な観点から見ると、怒ると血圧が上昇し、動脈や心臓など循環器系の病気の危険性を高めるおそれがあります。
また、イラっとする出来事によりつい怒ってしまった場合、自尊感情が損なわれ自らの評価が下がってしまうという研究結果もあります。
・怒るメリット
しかし、怒ることがメリットとなるケースもあります。アメリカのマサチューセッツ大学が行なった怒りとその反応に関する研究によると、怒りを抱える人々は自分にとって望ましい形に問題を解決する傾向があることがわかっています。
例えば、しつけの厳しい親の下で暮らす子供が、親と激しく口論することによって門限を変えさせるといった事例があります。
これは、相手から怒りの感情を感じ取ったことによって相手の発言をより聞くようになったと考えられます。また、自分もより正直に発言するようになり、譲歩する態度を示そうとすることで一つの着地点を得たと言えるでしょう。
見返しは「自分への感情」、仕返しは「相手への感情」

「見返す」と「仕返し」の話に戻ります。それぞれの言葉の定義は以下です。
見返す:見下された仕返しとして、りっぱになって相手に見せつける。
仕返し:嫌なことをしてきた相手に、嫌がることをしてかえすこと。
引用:岩波国語辞典
定義を見ると、「見返す」は感情を向ける対象が自分であり、「仕返し」は感情が相手に向いていると考えられます。
ここで、大学生・大学院生を対象に行われた実験を参考にしてみましょう。
嫌なことがあった後に「見返す」「仕返し」をそれぞれ考えることで怒りの感情をどれだけ減らすか、また自尊感情をどの程度回復するのかについての調査で、対象者には、部活の最中に他の部員にいやなことを言われ、笑いながら立ち去られたという仮定のもと実験が行われました。
- ①見返してやろうと考えて、今までにも増して練習に取り組み、時間を忘れるほど集中した後帰宅した(見返し対処群)
- ②仕返ししてやろうと思い、その部員のそばを通り過ぎる時同じことを言って立ち去った(仕返し対処群)
このような場面をイメージさせて、怒り感情と自尊感情について、嫌なことがあった直後とどのように変化があるのかについて調べたところ、以下の結果が得られました。


この結果、心理としては仕返しの気持ちよりも見返すという気持ちでいる方が感情を落ち着かせやすく、モチベーションにつながると言えます。
また、これは感情を向けるベクトルの違いでもあります。仕返しは相手への怒りの感情のみですが、見返すという感情は気持ちの対象が自分へ向いているため、悔しさをバネに自分を高めるという点で、見返しの心理は仕返しよりも有益だと考えられるのです。
「見返してやる」をモチベーションに変えよう!

見返しと仕返しの感情をまとめてみました。
<見返しの心理>
- ・怒りの経験を客観的なものとして受け止める
- ・肯定的な他者評価に繋がる可能性がある
このように、見返しの感情は「どうすればいいか考え、努力する」という行動につながり、モチベーションになります。
<仕返しの心理>
- ・「カタルシス効果」により怒りの感情が下がる
- ・他人を攻撃してしまった自責の念から自尊感情が下がる
これに対し、仕返しとは怒りは収まるものの自尊感情の低下を招き、コミュニケーションがうまく取れなくなることによる人間関係の悪化が懸念されます。

怒りの感情は誰もが持っているものです。
大事なのは、怒りをコントロールして上手に付き合っていくことです。しかし、自分の感情をコントロールするには、日々自分自身と向き合っていなければならず、コツコツと積み重ねていく必要があります。
- 「めんどくさい」
- 「自分と向き合うとかよくわからない」
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仕返しはすぐにできてスカッとするかもしれませんがグッと我慢。一歩先を見据え、目先の怒りを乗り越えることが健やかな生活への近道なのではないでしょうか。

Source:
関屋 裕希, 小玉 正博
【怒り感情生起後の対処としての見返しと仕返し ―怒り感情低減効果と自尊感情回復効果に着目して― 】健康心理学研究 25 巻 (2012) 2 号