近年、マスクの需要が格段に増えました。

新型コロナウイルスの影響で世界中の人たちがマスクをし、各地でマスク不足が問題にもなりました。これまでマスクをするという文化のなかった欧米でもマスクをすることを求められ、今やマスクに対する価値観は確実に変わってきています。

ウイルスや花粉などの害から私たちの身を守り、エチケットとしても活躍するマスクですが、実はマスクが精神依存の道具となり、マスクをすることで安心するといったようなマスク依存症の人が増えているんです。

自分に自信がない人はマスク依存になりやすい?

マスクの効用としては主に以下が挙げられます。

  1. ウイルスや花粉・粉塵などの予防
  2. 飛沫の拡散と予防
  3. 保湿、すっぴん隠し
  4. 自分を隠すツール

新型コロナウイルス蔓延以降、1と2については意識が一般化してきました。3についても、特に女性においては手っ取り早く素顔を隠せるという理由でマスクをするケースは多く、他にも小顔効果や紫外線対策といった目的で着用する人もいます。

マスク依存と言われる人に多いのが4です。
ある研究では、自尊感情の低い人ほど伊達マスクをする傾向にあることがわかっています。自分に自信が持てない人ほど対人関係において恐怖心を抱きやすく、マスクをすることで安心感を得るのです。

マスクによる「自己防衛」と「自分をよく見せる」効果

さらに、伊達マスクには自己防衛自分をよく見せるためという2つの目的があると考えられます。

・自己防衛としてのマスク

マスクをして仕事している女性
出典:Unsplash.com

自己防衛としてのマスクとは、「人と話さずに済む」「顔にコンプレックスがある」といったような、外部からの刺激から身を守ろうとする心理です。

スマートフォンやパソコンの普及によって、直接顔を合わせなくてもコミュニケーションが取れる時代になりました。職種によっては人と話さなくても仕事ができるので、とりたてて面と向き合う必要性を感じない、あるいは顔を合わせてコミュニケーションを取りたくないという人が増えたのです。

実は増えたわけではなく、マスクが一般化したことによってそういった人が顕在化したとも言えるかもしれません。これは顔を出さないで済むというような一種の内向的意識とも言えるでしょう。

自分に自信がないと、周囲の自分への反応に過敏になります。なるべく周りから見られないようにマスクで顔を隠すことで自分を消し、他者の視線を避けようとするのです。

・自分をよく見せるためのマスク

柄のマスクをしている女性
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文字通り、自己をよく見せる・自信をつけるというような積極的な理由です。

最近は、マスクをファッションの一部として、デザイン性のあるものやオリジナルに加工を施したマスクをしている人も多くなりました。

しかし研究によると、深層心理ではマスクをしていれば他人に表情や感情を読まれにくいので、自分が相手にどのように見られているか気にしないで済み、安心を得られやすいという見方があります。不安や緊張などの表情を他人に知られずに済むというのは、特に内向的な人にとっては精神的に落ち着ける傾向にあるようです。

また、脳には「空間補完効果」があると言われています。
隠れているものの情報を見えたつもりで想像し、過去の経験などから自分の都合の良いようにイメージで補うという機能です。マスクによって顔の大部分が隠れることで、「空間補完効果」が発揮されてポジティブな効果を期待する人も少なくないようです。

マスク依存を克服するためには

このように、マスクには顔を隠して視線にさらされないという自己防衛と自己をよく見せる作用があると考えられます。特に社交性に不安がある傾向の人にとっては、マスクを着けることで対人交流の不安を軽減させているのかもしれません。

しかし、そうした伊達マスクの効用が、いつしかマスクを手放せなくなる「マスク依存」へと発展させてしまうのです。

悪いことは起きないという心理教育が改善のカギ

マスクをしている建物前の男性
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伊達マスクや社交性の不安によってマスクをつける人は、マスクが身体症状を隠す行動の一つとなっている可能性が高く、安全確保を強めていると考えられます。

そういった人たちにはこのような措置が必要です。

  • ・人からのフィードバックを受け入れられるような心理教育を行う
  • ・マスクをつけなくても破局的な結果は起きないことを理解してもらう
  • ・人から否定的な評価は受けないことを理解してもらう

とある研究では、同じ趣味をもった仲間や気心が知れた人で集まることが、メンタル改善に効果的であることがわかっています。

1対1の関係では、頼りすぎたり裏切られたりして傷つく心配がありますが、「共同体」という環境ならみんなに守られているというような安心感が生まれます。そんな包まれるような体験を繰り返していくうちに、徐々に自分の持ち味や個性、能力をのびのびと発揮していくというような「主体的な行動」ができるようになるのです。

また、困っているときに助けてもらったというような体験をすることで、今度は自分が助ける側にまわり、仲間との間で共感、受容、承認、賞賛、激励をしながら目標に向かって一緒に歩んでいけるようになるという効果もあります。そうなればもはや孤独ではないと実感でき、ネガティブな感情から解き放たれて、マスク依存から卒業できるのではないでしょうか。

自分に自信を持って、他人の目を気にしない!

笑顔の女性たち
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新型コロナウイルスによってマスクが手放せなくなった今、必然的にマスクをつけている時間も長くなっています。しかし、マスクをつける時間が長くなればなるほどマスク着用が常態化し、感染対策以外の目的でマスクをするケースが増えていくかもしれません。そうなれば、こういったマスク依存症の患者が増えていくことにもなり得ます。

他人の視線から逃げ、自分の表情を隠そうとマスクをしても真の安心は得られません。安心を手にするためには、自分自身を理解し、認め、心の扉を開くことが大切になっていくでしょう。

また、自分の内面を見つめるには自分を客観視することが大切です。そのためにはまず自分を客観視してくれる存在が必要です。近年、AIカウンセリングというAIロボによるメンタルケアが注目されています。AIロボと会話しながら心を落ち着かせ、感情を記録することで自身を客観的に見ることができるのです。

人には話しにくい悩みもロボットになら気軽に相談でき、時間も場所も選びません。カウンセリングよりも安価に体験できるので、ぜひ一度AIカウンセリングを試してみてください。
SELF MIND

Source:
志村圭祐、田中速
【マスク着用行動の類型化に関する予備的研究】~社交不安への対処に関する行動・安全確保行動~
東京成徳大学臨床心理学研究,17号,2017,27-34

渡辺登(赤坂診療所)
【マスク依存】(ストレス科学研究 2018, 33, 15-20)

著者情報

SELF

北里大学医療衛生学部出身の医療系ライターを筆頭に、精神衛生やメンタルケアに特化した記事を得意とする。学術論文に基づいた記事を多く手掛けている。

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