「睡眠スケジュール法」というものをご存知でしょうか?
簡単に言うと、より良い睡眠を摂るために時間や行動を調整することで、別名睡眠調整法と呼ばれています。主に不眠症の改善に活用されており、認知行動療法の一種なのです。
- 「布団に入っても眠れない」
- 「睡眠が浅い」
そんな悩みを抱えている人は、ぜひ一度睡眠スケジュール法を実践してみてください。
布団に入っている時間と睡眠時間を近づける

一般的に、不眠症とは「満足な睡眠がとれない状態が一ヶ月以上続き、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲不振などの不調があらわれる状態」のことを言います。原因は日々のストレスや心身の病気、薬の副作用など様々です。
不眠症に悩む人の多くは、布団(寝床)に入っている時間が長い傾向にあります。寝ようと思ってなるべく早く布団に入るのは一見適切な対処かと思いきや、そこに落とし穴があります。

布団に入って横になっている時間と、実際に睡眠している時間の差が大きいと、寝つきにくくなったり途中で目が覚めてしまったりする「中途覚醒」が発生します。たとえ布団に入っていたとしても、熟睡できなければ睡眠の密度が浅いことになり、上質な睡眠を得ることができません。
睡眠スケジュール法は、布団に入っている時間と睡眠時間がなるべく近くなるように調整する方法なのです。

眠れないからといって、寝床でスマホを見たり本を読んだりする人もいるでしょう。しかし、そうすると本来眠るための場所として条件づけられていた寝床が、眠れない場所もしくは活動する場所として脳にインプットされてしまい、ますます眠れない状態に陥ってしまうおそれがあります。
大事なのは、寝床は眠るためだけの場所だと脳に再認識させることです。
- ・眠くなるまでは寝床以外の場所で過ごすこと
- ・自然と眠くなるまでは眠ろうとしないこと
- ・眠れないときは寝床から出ること
不眠に陥らないためには、これらを守ることが重要になります。
睡眠スケジュール(睡眠調整)法を実践してみよう!
①睡眠効率を把握する

睡眠スケジュール法を行うためには、まず自らの睡眠習慣を正しく把握することが重要です。
自分が眠ろうと思って寝床に入ってから、眠れない時間が実際にどのくらいあるのか、また翌朝起床した際に、何時間眠れたと感じているかを把握しましょう。「睡眠日誌」を作って、毎日記録をつけるようにすると効果的です。
自分の睡眠習慣を把握したら、そこから睡眠効率(寝床で過ごす時間における睡眠時間の割合)を計算しましょう。睡眠効率の計算方法は下記のとおりです。

たとえば、22時に寝床に入り、翌朝8時に起床した場合、寝床で過ごした時間は10時間となります。そのうち実際に眠れたと感じる時間が6時間である場合、睡眠効率は60%ということになります。この睡眠効率が一週間の平均で85%以上になることを目指します。
②就床時間を遅くする

睡眠効率を把握したら、一週間の平均の睡眠効率85%に近づけるため、寝床に入る時間(就床時間)を実際に眠れている時間の15〜30分前に調整します。
上の例のように眠れる時間が6時間で、朝8時に起床するという場合は、午前1時30分〜45分に寝床に入るようにします。その時間になるまでは、できるだけ寝室以外の場所で過ごし、寝室や寝床は「眠るためだけの場所」ということを身体と脳に条件づけます。

③少しずつ睡眠時間を長くする

一週間の平均睡眠効率が85%を超えたら、就床時間を15分早くするか起床時間を15分遅くして、徐々に眠れる時間を長くしていき、日中に不調が出ない程度の睡眠時間を目指しましょう。
この方法では、一時的に遅寝早起きとなってしまいますが、寝床で起きている時間を短くし、自身のカラダが一番「眠りやすい時間」に睡眠を集中することによって、主観的な睡眠に対する満足度を向上させることができます。
睡眠スケジュール法は、不眠の改善に効果が期待できる方法ではありますが、不眠症を根本的に治すには、原因に応じた対処が必要となることもあります。特に心身の病気や薬の副作用が不眠の原因となっている場合は、専門の医師の指導に基づいた改善が必要です。
まずは眠れない原因となっている事柄をしっかりと見極め、原因に応じた適切な対処を心がけましょう。
不眠症を治して充実した人生を

「人は一生の3分の1を睡眠に費やす」と言われるほど、睡眠時間は人生の中で多くの時間を占めています。
睡眠スケジュール法を活用して充実した睡眠習慣を持つことは、生涯を通して心身の健康を保ち、その人が持つ能力を存分に発揮したり、さらなる成長を遂げることに寄与するでしょう。
ただし、睡眠スケジュール法はあくまでも不眠によって日中に不調があらわれる状態が長期間続いている場合に有効なアプローチです。不眠症ではない人が行うと、逆に睡眠のリズムを乱してしまう恐れがありますので注意してくださいね。
Source:
宗澤 岳史、三島 和夫
「不眠症に対する認知行動療法」(精神保健研究 55:71-78,2009)
国立精神・神経医療研究センター
「睡眠障害・睡眠問題に対する支援マニュアル」