• 「何もしたくない」
  • 「何も考えたくない」
  • 「目の前のことから逃げたい」

こんな日はありませんか?
そう、いわゆる無気力です。

無気力は、日本が高度経済成長を迎えた頃から言われてきました。モチベーションを保ち、精力的に過ごしている人を横目に、無気力な自分に対して自己嫌悪に陥るケースも少なくありません。

誰にでも起こりうる無気力状態。
もし無気力になってしまったら、いったいどう対処すればいいのでしょうか。

大学生に見られるスチューデント・アパシーとは?

部屋で横になっている女性
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ひとえに無気力といっても、種類も理由も人それぞれです。何に対して、どういう経緯で無気力になったのかを知ることができれば無気力から脱却することができるかもしれません。

ここで、大学生に多く見られる「スチューデント・アパシー」という症例があります。スチューデント・アパシーとは、特に原因がないにもかかわらず勉強をする気が起きなくなってしまうもので、大学生において問題になっている留年率・退学率の上昇もスチューデント・アパシーが原因ではないかと考えられています。

スチューデント・アパシーから引き起こされる無気力は、うつによる無気力とは種類が異なります。スチューデント・アパシーが勉強への無気力を誘引しているのに対して、うつ的な無気力は生活全体に影響するものとされています。

さらに、スチューデント・アパシーの特徴として「悩まない」「悩めない」のような、自分自身の問題について考えられないといった点があるのに対して、うつ的症状は自分自身の問題に対して深く考えてしまう特徴もあるのです。

これらは両者とも無気力とひとくくりにされてきました。しかし現在、そのひとくくりにされた無気力が、スチューデント・アパシー的なものと抑うつ的なものとにパターン分けできるという研究が行われているのです。

無気力における「スチューデントアパシー」と「うつ病」

部屋の隅でうずくまっている男性
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2003年に、大学生283人(有効数233人)を対象に行われた調査例があります。

サークルやアルバイトなどへの意欲を聞くアンケートをもとに、高意欲グループと3つの低意欲グループに分けて研究が進められました。すると、3つの低意欲グループの中でも、学業への意欲だけが低いグループとすべてのことに意欲が低いグループに分けられることがわかったのです。

さらに、学業への意欲が低いグループだけは自分の内面について考えないといったスチューデント・アパシーの特徴が見られました。このことから、学業への意欲が低いグループにはスチューデント・アパシー的な無気力の傾向があり、他の2つの低意欲グループとは違うことがわかったのです。

このことから、「何もしたくない」「逃げたい」といった思考に対してただ単に無気力とひとくくりにしないことが必要だと言えるでしょう。

誰もが無気力になる可能性がある

木の上でだらける男性
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ネガティブな体験をした際に、その場から逃げ出したいと思う人は多いのではないでしょうか。

しかし上記の研究において、対人関係や娯楽への意欲が低いグループでは、ネガティブな体験をしたときに自分のせいとして受け止め、「自分の力量が足りなかった」「ああしておけばよかった」というように自分の内面について考える傾向にあることがわかっています。

嫌なことから逃げず、困難に立ち向かう勇気や強さをもつことは素晴らしいことです。ただ、こういった人たちは誰かが差し伸べてくれた手を取ろうとせず、また娯楽にも興味が向かないため、ストレスを溜め込むことで抑うつ状態に陥りやすいのです。

ストレス社会と呼ばれている今、私たちは様々な刺激や情報を浴びて暮らしています。ストレスを発散できずにいることで精神的に疲弊し、気づいたときには立ち上がる元気がなくなってしまうおそれもあります。大学生に限らず、無気力は誰にでも起こりうる状態なのです。

何もしたくない日はコミュニケーションを取ろう

大人と子供が手と手を取り合う
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何もしたくないときは、誰かとコミュニケーションを取ってみるのも手です。

ネガティブになると偏った思考になりがちで、その偏った思考がさらなるネガティブを引き起こすので悪循環になりやすいです。一人で考えれば考えるほど袋小路に迷い込み、ネガティブから抜け出せなくなるのです。

無気力なときほど意識を外に向けることが大切です。家族や友人、恋人、仕事仲間など、誰かに気持ちを伝えるだけでストレス発散につながり、思考が整理されることもあります。また、自分が無気力であることを誰かに伝えることで、サポートを受けやすくなることもあるでしょう。

また、今やコミュニケーションはAIでも取れる時代です。スマホアプリでストレスケアができるSELF MINDでは、人には話しにくい悩みでも気兼ねなく相談でき、時間も場所も気にすることなくカウンセリングが受けられます。日常会話をしながらユーザーを知っていくことで、より精度の高いアドバイスやストレス解消法を提案してくれるのです。

何もしたくない日や逃げ出したいと思うときは誰にでも起こり得ます。そうならないように、普段から心のケアをしておくことが大切です。

心をすり減らさないためにも、悩み事は一人で抱え込むのではなく、周りに相談できるといいのではないでしょうか。

Source:

狩野武道、津川律子
「大学生における無気力の分類の試み」(こころの健康 2008年 23 巻 2号 p. 2-10)

著者情報

SELF

北里大学医療衛生学部出身の医療系ライターを筆頭に、精神衛生やメンタルケアに特化した記事を得意とする。学術論文に基づいた記事を多く手掛けている。

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