• 「夏休みの宿題はいつもギリギリにやる」
  • 「テストが近いのに勉強に集中できない」

そんな経験はありませんか?

やるべきことをついつい後回しにしてしまい、結果的に提出期限がギリギリになったり準備不足で間に合わなかったり……という人は少なからずいるのではないでしょうか。

今回は、やるべきことを後回しにするデメリットを挙げつつ、先延ばし癖の原因となりうる完全主義・完璧主義について紐解いていきたいと思います。

やるべきことを後回しにするデメリット

デメリット1.ミスが多くなる

机に向かってペンを走らせる男性
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大学生175名を対象にした研究では、やるべき課題を先延ばしにした生徒たちに共通してミスが多いという結果が出ています。

ケアレスミスをはじめ、「余裕がなくなることで処理できる問題数が減る」「プランがないため目先のことを優先して衝動的になる」など、時間に追われることでパニックになりやすく、先延ばしにすることで本来の力を十分に発揮できていないと考えられます。

これは学業に限ったことではありません。
追われている状態だと集中力は上がるかもしれませんが、俯瞰して見る余裕がないためミスに気づけないことが多く、ミスをしたことを悔やめばストレスにつながることもあるのです。

デメリット2.信頼を失う

怒っている男性
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物事を先延ばしにした結果、締め切りを守れなかったり結果が芳しくなかったりすると、結果的に相手の期待を裏切ることにつながります。期待を裏切ればそれに比例して評価も下がるでしょう。

また、期待値を下回ることは次の機会を失うということにもなりかねません。

人は、自分の期待を上回る活躍をしたり結果を残す人に対して好印象を抱きやすく、特に仕事においてはそういった人と多く関わる傾向にあります。期待を下回れば人は離れ、気づけば周りに誰もいないというような孤立した状態になるおそれもあります。このような状態が続けば次第に追い込まれ、自己嫌悪に陥るというケースも多いのです。

デメリット3.成長チャンスを逃す

山々を見つめる男性の背中
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デメリット2に関連しますが、信頼を失った結果次のチャンスを失い、活躍できる場が減ることが考えられます。

「実践に勝る経験はなし」という表現がありますが、目指すべきゴールがある中で、緊張感を持って行動するような場所では成長速度も上がります。逆にいえば、そういう場所から遠ざかることは自身の成長にも悪影響が及ぶおそれがあります。

信頼を失うことは実践経験が積めなくなることを意味し、ひいては自身の成長の妨げにもなるのです。

なぜ後回しにするの?

後回しにするというのは、やるべきことがあるにもかかわらずそれ以外の行動をしてしまう現象です。この現象には2つの理由があると考えられます。

理由1.本能が理性を支配する

木のそばにいるライオン
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1つは、理性が本能に支配されることです。
「勉強しなきゃいけないのに漫画を読む」「寝なきゃいけないのに動画を見る」というような現象は、やるべきだと考えている理性が、今を楽しみたいというような欲求に負けてしまうことで起きると考えられます。これは動物の本能とも言えるかもしれません。

しかし、人間は理性を持つ生物です。この動物的本能をうまく制御し、優先順位を決めて物事を進めていかなくてはなりません。「先延ばしにすることで起きるデメリット」「先に終わらせておくことのメリット」などを想像し、意識を変えて行動することが大切です。

理由2.完全主義・完璧主義の体質に由来する

暗い部屋で一人座っている男性
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もう1つは、完全主義・完璧主義という体質です。
このような体質の人は、強い恐怖や不安などの感情を持っている傾向にあります。そういった負の感情が視野を狭め、やるべきことを後回しにしてしまうことに繋がるのです。

では、いったいなぜ完全主義・完璧主義の人は恐怖感を感じるのでしょうか?以下、完全主義・完璧主義という体質についてフォーカスしていきたいと思います。

完全主義と完璧主義の違い

よく言われるのが完全主義完璧主義の違いです。

一見似ている両者ですが、どんな違いがあるのでしょうか?

結論から言うと、現時点では学術的に大きな違いはありません。ただ、一般的には完全主義は「客観的」、完璧主義は「主観的」な視点を持っている人と認識されることが多いようです。

どちらも高い意識を持って目的に向かうという意味では同じですが、 他社や周囲を含め、計画をまっとうしようとする完全主義と、自分が納得できるまでクオリティにこだわり、完璧を追求する主観的な完璧主義とではややニュアンスが違うのかもしれません。

「完全でありたい」「失敗が怖い…」と思いがちな人は注意

窓の外を見つめる男性
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日頃こんなふうに思うことはありませんか?

  • 「正確に仕事ができているか絶えず気になる」
  • 「ベストを尽くせばいいというより、これまで以上に頑張ろうとする」
  • 「最善を尽くしても不安があり、もっとできたのではと思ってしまう」
  • 「達成できるとは思えないほどの目標や水準を設定してしまう」
  • 「目的の重要性を過大評価し、自己を過小評価 する」

これらのような意識を持つ人は、完全主義もしくは完璧主義である可能性が高いです。常に完全な成功を求め、それ以外は全くの失敗(all or none thinking)ととらえ、成功よりも欠点や過去の失敗に目が向きやすい傾向にあると言えるでしょう。

完全(完璧)主義というのは、

①完全でありたいという欲求
②自分に高い目標を課する傾向
③ミスを過度に気にする傾向
④自分の行動に漠然とした疑いを持つ傾向

これら4つの要素で構成されると言われています。
たとえば英語の勉強をするとなったとき、意識としては、

①「模試で毎回全て高得点を叩き出したい」
②「今月は単語帳を2冊終わらせる」
③「あの時あの問題が解けていれば、こんなことになっていなかったのかもしれない」
④「この勉強法は、本当にレベルアップに繋がるのだろうか」

というように考えられます。
①から④全てに完全主義、または完璧主義の人のストレス原因が潜んでいます。

主に、①②の要素を強く持つ場合を「適応的完全(完璧)主義」、③④の要素を強く持つ場合を「不適応的完全(完璧)主義」と定義されています。

適応的完全主義者と不適応的完全主義者

では、「適応的完全(完璧)主義」と「不適応的完全(完璧)主義」の人にはどういった違いがあるのでしょう?学術的には以下のように区別されています。

適応的完全(完璧)主義者
→自分の行動と求める水準の誤差があまりないため、ストレスを感じることが少ない人
不適応的完全(完璧)主義者
→自分の行動と求める水準の誤差が大きく、ストレスや抑うつ症状が生じている人

両者とも求める水準が高いという面では同じですが、その水準に対して結果が伴うかどうかがストレス度合いに影響しているようです。

何事においても、目標を設定することは生産性や成長にもつながり効果的な施策と言えます。しかし、高すぎる目標は心身に過度な負担をかけ、強い疲労感やキャパオーバーを招くことにもなります。仕事の遅延や学業不振の原因の一つともなり得るのです。

理想を追いかけていくうちに疲弊し、自分を追い詰めてしまうと、やがて悩みや葛藤を生み、結果的に先延ばししてしまうことに繋がるのではないでしょうか。

先延ばし癖を改善する方法とは?

ここまで述べた通り、完全主義や完璧主義はよりストレスを抱えやすいという意味で、デメリットがあることは否めません。やるべきことを後回しにしてしまうような先延ばし癖が、もしも完全主義・完璧主義に由来するものだとすれば、まずはその体質を治す必要があります。

自分自身を理解し、意識を少し変えるだけで完全主義・完璧主義体質は改善されるはずです。以下、先延ばし癖を克服するための改善法を2つ紹介します。

改善法1.とりあえず10分やってみる

ベットに座り本を読む女性
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「時間を決める」というのは効果的な方法です。

たとえば10分だけ作業すると決めたら、まずは10分作業してみましょう。気が乗ればそのまま続けてもいいですし、気が乗らなければ10分でやめて構いません。

やめたとしても、作業をしたという事実を脳は覚えており、それは達成感に繋がります。「やった」という事実を積み重ねていくことで、「ここまでやってやめるのは何だかもったいない」という意識に変化させていくのです。

改善法2.to doリストを作る

また、to doリストを活用するのも効果的です。

やったことをリスト化し、可視化することで自分の成果を自覚しやすくなり達成感にも繋がります。to doリストが埋まっていけばいくほど、楽しみながら進めていけるという利点もあるのです。

また、今はスマホアプリでメンタルケアができる時代です。AIロボと会話しながらストレスを発散したり、記録をつけながら自身のストレスを客観的に認識することでストレス軽減を目指すのです。メモ代わりにこういったアプリを使うのも有効なので、ぜひ試してみてください。
SELF MIND

考え方を変えてストレスフリーな人生を

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完全主義・完璧主義の人から生まれる発想やアイデア、プロダクトなどは周辺の人たちに多大な影響を与え、グループやコミュニティに貢献しているケースは少なくありません。様々な要因によって自信を失いネガティブ思考になることで、せっかくの強みが発揮されないのはもったいないことです。

考え方や捉え方次第で状況はいくらでも変えられます。もし「完全主義者かもしれない」「先延ばし癖がある」 などと思う部分があれば、少し考え方を変えてみましょう。

意識の変化で、これからの人生が明るくなるかもしれませんよ。

Source:

増井綾及、岩永誠(広島大学大学院総合科学研究科)
【自己志向的完全主義と責任性が情報収集行動に及ぼす影響】

宮原千佳
【大学生における完全主義の適応的側面と不適応的側面 ー抑うつ、不安、対処行動との関連ー】

石田裕昭 (東洋大学大学院社会学研究科)
【大学生の完全主義傾向と課題解決方略の非効率性:なぜ彼らの努力は報われないのか】

中野敬子・臼田倫美・中村有里
完璧主義の適応的構成要素と精神的健康の関係―日本語版 Dyadic APS-R 完璧主義質問表による検討―
跡見学園女子大学文学部紀要 第45号(2010年9月15日)


大野木泉 (関西学院大学)
中村恵理 (関西学院大学)
篠置 昭男(関西学院大学)
【完璧主義の臨床心理学的研究一日本版多面的完璧主義尺度の作成の試み一】

藤田正
【先延ばし行動と失敗行動の関連について】14巻43-46p 2005-03-31

黒田卓哉
【先延ばしにつながる意思決定に影響する行動選択肢への評価】Japanese Journal Of Applised Phychology 2017,Vol.42,No.3,194-208

著者情報

SELF

北里大学医療衛生学部出身の医療系ライターを筆頭に、精神衛生やメンタルケアに特化した記事を得意とする。学術論文に基づいた記事を多く手掛けている。

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