身近にあるメンタルの問題

あなたは今、映画を観ているとします。失敗を乗り越えて成功をつかむ話、失恋から立ち直る話、旅を経て再び前を向く話……。それぞれのストーリーはまったく違うかもしれません。それでも共通して言えることがあります。

そう、そこには立ち直るきっかけをくれる誰かがいるということです。幼なじみだったり旅先で出会った人だったりストーリーごとに違うかもしれませんが、多くの場合、主人公に寄り添い手を差し伸べる人物がいるものですよね。たとえ心が弱っていても、誰かのチカラを借りて前を向くことはできるのです。

それはもちろん教育現場でも当てはまることです。たとえば、教員免許を取るために行う教育実習の現場です。近年では、メンタル面に問題を抱える教育実習生がトラブルを起こしてしまうケースが目立っていて、そのため大学や受け入れ先の学校でそういった教育実習生をサポートする動きが出てきています。

教育実習生へのメンタルヘルス支援

東京学芸大学で行われた、メンタル面に問題をかかえた教育実習生へのメンタルヘルス支援例を見てみましょう。

学校の支援方法としては、まず実習開始前に学生の状況を把握します。そのうえで面談をして、学生の詳しい状況やニーズを知ります。そして、その情報を実習先の学校職員と共有し、どう対応するか想定するというものです。さらに必要なときにはサポーターを派遣して、実習開始後のサポートも忘れません。

あるアスペルガー症候群の学生の場合は、事前の面談で生徒とのコミュニケーションに不安があるなどの悩みを聞き、それを踏まえて休み時間や放課後での生徒とのやりとりなどを事前に練習したりしています。

また実習が始まってからも、悩みがあればサポーターに打ち明けられるようにし、実習先の教諭も何かトラブルになる前に対応できたとのこと。このアスペルガー症候群の学生も、メンタル面でのサポートのおかげで、次の教育実習も無事に終えることができたそうです。

メンタル支援に大事なこと

この研究からいくつかわかったことがあります。

1つは、支援する側である大学が、学生の悩みや不安などの情報を共有することが重要だということです。それによって学生の不安を減らしたり、具体的な準備をすすめられたりと、事前にしっかり対策することができたそうです。

2つめは、教育実習先でのことを大学側でもしっかりフィードバックすることで、その学生にあった支援をすることができるということです。

3つめは、コミュニケーションが苦手というアスペルガー症候群の特徴が原因でトラブルに発展しかけた時も、事前に共有していた情報をもとに適切な支援ができたということです。

誰かをメンタル面でサポートするとき、マニュアルに当てはめようとしても、誰もが一人ひとり違う人間である以上、うまく支援することはできないでしょう。大事なのは、個人個人の状況にあったサポートということですね。

悩みや不安は支え合おう

今回は教育実習にのぞむ学生の例でしたが、決して彼らだけに当てはまることではありません。会社の中での人間関係や学校のクラスメイトとの関係、ご近所付き合いなど、人との関わり方が大事な現代社会において、様々な場面で同じような悩みを抱える人は多いはずです。

それでも、「この人はこういう不安がある」とわかっていること。「自分にはこういう悩みがある」と知ってもらえていること。情報を共有している人の数だけお互いの不安も減り、そしてその人数が多ければ多いほど世界は広がっていくことでしょう。

何か悩んでいる人がいたら、ただ話を聞いてあげるだけでもその人の助けになるかもしれません。また何か悩んでいる人も、自分はこうだから仕方ないと思い込まず、誰かに悩みを相談してみてもいいかもしれませんね。



Image:Unsprash

Source:
「教育実習における学生のメンタルヘルス支援に関する考察」
(矢嶋昭雄。学校教育研究 2013年 28巻 p. 123-135)

著者情報

SELF

北里大学医療衛生学部出身の医療系ライターを筆頭に、精神衛生やメンタルケアに特化した記事を得意とする。学術論文に基づいた記事を多く手掛けている。

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