心に寄りそう音との付き合い方

ピアノロボット

耳をすましてみませんか?

目を閉じて耳を澄ましてみてください。何か聞こえてくるでしょうか。

普段聞いている音から初めて聞く音まで、日常生活の中には様々な音が身近に存在しています。自然なものもあれば人工的なものまで、様々です。

そして、音は少なからず感情に影響を与えるものです。たとえばテレビドラマ。楽しいシーンにポップな音をあてるなど、シーンに合わせてBGMが流れることで見る側の感情をより揺さぶります。

もはや私たちと切っても切れない関係といっても過言ではない音。
じつはメンタルヘルスの向上やストレス発散にも深く関わっているようです。
音は、私たちの心にどのような影響を与えているのでしょうか。

騒音と心の関係

音が人間の健康に影響を与えるケースは様々あるとされています。その中でもネガティブな影響を与える音としては、騒音があげられることでしょう。そしてメンタルヘルスの面で最も重要なのが、都市環境騒音が私たちの睡眠に与える影響です。

たとえば、国内5都市8地域の成人女性3,600人を対象とした道路騒音による不眠症調査によると、幹線道路沿いから20m以内のエリアでは不眠症リスクが交通量に比例するという結果が出たそうです。もし自分が交通量の激しい場所で生活していたら、と考えるとわかりやすいかもしれません。眠りを妨げる騒音に悩まされることが想像できるのではないでしょうか。

そんな騒音ですが、読書などにはそれほど影響しないという研究結果もあります。最初はうるさくて作業に集中できない状態であっても、次第に慣れて騒音が気にならなくなってくるようです。それどころか、音によってはむしろ効率を上げることすらあるというから不思議です。

いい音、いい気分

音には騒音のようなネガティブなものもあれば、聴くだけで心地よく感じるポジティブなものもあります。

ポジティブな音の最も典型的で成功している応用例としてはカフェや喫茶店などのBGMなどが挙げられます。流れてくるBGMが、隣の会話などの雑音をうまく隠して緩和することに加えて、BGMが自分の好みに合っていた場合、その環境に対する満足度が上がると考えられているそうです。

同様に、働く人のストレスケアとして、職場に音楽や自然音を導入することも珍しくありません。当然ながらそのようなポジティブな音はメンタルヘルスの面で、私たちに良い影響を与えるといえるでしょう。

音を感じる

世の中にはいろんな音があります。それはつまり、音の好みも人それぞれということです。自分にとっては意味のある音でも、誰かにとっては意味を持たない雑音だったりするかもしれませんよね。

それは個人に限らず、場所でもいえるようです。たとえばセミの声も、一般的には真夏に聞こえてくる虫の声ですが、ある地域では特別な音だったりすることもあり、そしてシンボルとなっているセミの声を守るために、騒音を規制する動きが生まれるかもしれません。

これは、特定の音を意識している人とそうでない人との間で差異があるからこそ身近な音に関心を向けることで環境問題への意識を変えようという意図的な意識の創出ともいえます。ある意味、環境教育の一環ともいえる取り組みですが、その中にはメンタルヘルスの観点から見て興味深い例もあるのです。

音で遊ぼう

たとえば、目を閉じて遠くの音から近くの音まで、聞こえてくる音を感じてみるというものがあります。耳だけで感じたままに絵で表現してみると、実際に目で見たものとは違う景色が描かれているのではないでしょうか。そしてそれによって、自分の意識の幅を知ることにつながるということです。

また、風や木などの自然の音に耳を傾けその変化を感じることで、自分の生活の中での発見につながったりもします。他にも自分の声による振動が、姿勢によって変化することを肌で感じるエクササイズなど、音という要素を取り入れたボディワークといえるでしょう。

これらのように、普段なら聞き逃してしまいがちな音に意識を向け直すことで、自分と音との関係性を考えられるはずです。そしてその作業自体が、自分自身のメンタルヘルスのありようにも深く関係する作業となるかもしれません。

あなただけに響く音を

音とメンタルヘルスには深い関係があることに気づいていただけたでしょうか。様々な音が散在している世の中ですから、日常の中で聞き逃してしまいがちな音に意識を向け直すことは、きっとプラスになるはずです。

さて、ここであらためてもう一度。

目を閉じて耳を澄ましてみてください。

トタン屋根に滴る雨音、冷蔵庫がうなる音、電話越しの声。

元気が出る音、心が落ち着く音、悲しみに寄り添ってくれる音。

もしかしたらあなたの身の回りにある何気ない音が、知らず知らずのうちに心にパワーを与えてくれているかもしれません。気が向いたら自分だけの音を探してみるのもオススメですよ。

Image:Unsplash

Source:

音環境とメンタルヘルス

(影山隆之。こころの健康 1998 年 13 巻 1 号 p. 34-39)