「子どものお弁当を作るために毎朝早起きをする」
「子ども優先の生活を送る」
「子どもから目が離せない」
これらは、子育てや育児をする多くの人が経験することではないでしょうか。
可愛いはずの我が子ですが、身を削って育児をしていく過程で次第にストレスを抱え込んでしまう人もいます。
育児をする中で、ストレスを抱え込まないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
目次
育児への不安、環境の不安、働けなく不安…母親にのしかかる様々な不安
乳幼児期にある子どもの母親312名を対象に、育児のどんなことについてストレスを抱えているかを調査したところ、
・育児に伴う不安感
・育児環境の不備
・アイデンティティの喪失
などの相談が多かったそうです。
育児に伴う不安感については、命を育てることへの責任感や恐怖感が母親に多大なストレスを与えていると考えられます。特に初子の場合、育児と言ってもどうすればいいのかわからないという人は多いと思います。
以前、ベビーシッター経験のある芸能人が「子どもが生まれたと同時に母親も生まれる」と言っていました。誰もが最初は育児初心者であり、子どもと接していきながら学び、親として成長していくという意味では的確な表現なのではないでしょうか。
育児環境の不備については、経済的な問題をはじめ、家族の協力体制ができていないことへの不安、さらには子どもが事故・事件などの被害にあうことに対する心配などが含まれているようです。
日本では、地域によって地元住民による防犯ボランティア等のパトロール活動や「子ども110番の家」の活動などが行われており、このような地域社会による支援活動の推進は今後も必要とされていくと思われます。
アイデンティティの喪失による脅威も母親にとっては大きなストレスになっているようです。育児によって自分が社会から取り残されるというような就労に関する懸念や、周りから母としてしか見てもらえず、社会において自分の必要性や存在意義を感じにくくなる不安もあるそうです。
これらの不安は、核家族化や近所付き合いの減少とも相まって、育児をきっかけに母親が社会的孤立を引き起こす要因となっていると考えられます。こういった孤立は深刻化している地域もあり、今後の対策を急ぐ必要がありそうです。
ストレス発散のための「相談」と「自己解決」
身近に相談できる相手がいることが大切

日本で乳幼児期の子育てをしている母親400名への調査において、育児について誰に相談することが多いかというアンケートが行われました。結果は「夫」が圧倒的に多かったようです。そして「友人」「親戚」と続き、「専門家や行政」に相談する割合は一番低かったそうです。
専門家や行政と言えど、見知らぬ人へ相談するよりも、夫やパートナー、友人など身近にいる人の方が現実的なサポート者なのかもしれません。となると、子育てにおける相談者としての夫(パートナー)の役割は重要だとも言えます。
身近にいる分、困ったときに助けを求めやすい存在である夫が、親身なサポートや協力的姿勢を取るといったような相談者としての「質」を上げることは、子育てをする妻にとっては大きな心の支えになるのではないでしょうか。
状況や環境によって変わる相談相手
これ以外にも、「教師」や「インターネット」などに救いを求めるケースもあるようです。
たとえば学校での友人関係など、夫より教師に相談した方が効率的な解決につながりそうな場合には相談相手を選択していると考えられます。
インターネットについては、育児ネットワークの広がりや人との関係の重要性が高まっているそうです。未就学児の母親をはじめ、「インターネット上の子育てに関するホームページ」に頼る人が増えてきていることがわかっています。
子どもが小さいときはそこまで近所付き合いが行われているわけでもなく、特にパートナーや友人がそばにいない場合は孤独を感じてしまう親が多いのが現状です。インターネットを使えば同じような悩みを持つ経験者や専門家の情報を手軽に共有・入手できるので、インターネットを参考にすることは自己解決には効果的な手段と言えそうです。
ストレスを自己解決する親や保護者たち
また、育児ストレスを自分の中で消化しようとする人も多いようです。
「社会復帰の話は出るけれど今はどうしようもない」
「考えても仕事がないからあきらめている」
「寝るしかない」
「家族に子どもを見てもらって気分転換をはかる」
これらは一種の「諦め」に近い考え方かもしれませんが、環境や状況をふまえた上で割り切るしかないというような考え方は、ストレスを抱えないための一つの解決法なのではないでしょうか。相談できる存在がいなかったり相談するのは気がひけるといったような人たちにとって、このような「自己解決」による対処はストレス発散のための手段と言えそうです。
解決できなくてもいいので、ストレスを抱え込まずに発散を

子どもは目が離せない存在であり、自立するまで親や保護者の手がかかるものです。
たとえば何か問題が起きたとき、もちろん解決できるのが理想ですが、すべての問題を解決するのは困難です。解決できずに背負い込んでしまえば、いつしか抱えきれなくなり押し潰されてしまう恐れがあります。
そんなときは、無理に解決しようと思わないようにしましょう。

上記の表のように、自己解決できずに困ったときや相談したいときには発散することが大事です。
話を聞いてもらったり
悩みを共有したり
愚痴を言ったり
抱えているものを口に出すだけで、少なからず心が軽くなることもあると思います。
問題が解決するかどうかはそこまで重要ではなく、「ストレスを抱え込まない」ことこそが大切なのです。
家族が笑顔で暮らせるためにも、育児ストレスはできるだけ減らしていきたいものですね。
Image:Unsplash
Source:
【母親の育児ストレスにおける相談と対処の実態とその関連性】
清水嘉子
【社会的な要因に関する育児ストレスが母親の精神的健康に及ぼす影響】第69巻 第1号,2010(53~62)
草野恵美子、小野美穂

AUTHOR
SELF
北里大学医療衛生学部出身の医療系ライターを筆頭に、精神衛生やメンタルケアに特化した記事を得意とする。学術論文に基づいた記事を多く手がけている。