映画インサイドヘッド

あなたも今すぐメンタルケア!「インサイド・ヘッド」とは

あなたも今すぐメンタルケア!「インサイド・ヘッド」とは

もしも自分の脳内を覗き見ることができるとしたら、どんなふうに感情が処理されているのか、気になりませんか?

2015年に公表されたディズニーの「インサイド・ヘッド」は、まさしくその様子や感情模様をおもしろく描いた映画となっています。

この映画は、心理学者のダシャー・ケルトナー氏の監修で制作され、感情が脳内でどのように処理されるのか、全て科学的な根拠に基づいてつくられています。一見すると、ただの「子供の映画」に見える内容も、感情の複雑さ、心の知能数(EQ)についてなど、大人でも人間感情について学べる内容となっているのです。映画の中で繰り広げられる豊かな感情の表現は、認知行動療法、発達心理療法、臨床心理学の観点から驚くほどに誠実につくられています。

メンタルヘルスの分野においては高評価されるあまり、海外では「医者も患者もインサイド・ヘッドを観るべき理由」という論文が実在するほどです。インサイドヘッドの映画から学べる感情についての教訓と、実際に私たちが生活の中でその教訓をどう活かすことができるかを紹介していきたいと思います。

インサイドヘッドでは感情の擬人化をする

「インサイド・ヘッド」から学ぶ3つの教え

悲しい感情は擬人化して捉えよう!

映画「インサイド・ヘッド」からインスピレーションを得て実行されたとある研究では、「感情の擬人化」(それぞれの感情を個別の人物のように捉えること)が人間の行動心理にどういう影響を及ぼすか調べています。

まず、被験者たちに「人生で最も悲しかった瞬間」を思い出させて2つのグループに分けます。
1、悲しみによって受けた「影響」を紙に書き出すグループ
2、その悲しみを「人にたとえるとどんな人物か」を紙に書き出すグループ

その結果、悲しみを人にたとえたグループで悲しみの軽減が見受けられました。

次に、この「悲しみの軽減」が、私たちの消費傾向にどのような影響を及ぼすか調べるため、被験者それぞれに「食べたいもの」と「欲しいパソコン」を選択してもらいました。その結果、「悲しい感情の擬人化」を行った被験者は欲望に左右されることなく、「健康的な食べもの」と「実用的なパソコン」を選択する傾向にありました。

そして研究者たちは、「悲しみの軽減は、セルフコントロール力を向上させ、自分にとって有意義な選択肢を選び易くするようだ。」と、結論付けています。この内容から「悲しい感情の擬人化」は、私たちの感情を向上させ、同時に衝動的な感情の抑制もできる手法になることがわかります。

ここで一つ注意したいのが、「幸せな感情」を擬人化した場合、被験者たちの幸福度が下がってしまう傾向にあることです。全ての感情を擬人化しても同じ効果があるわけではないのです。

インサイドヘッドでは自己感情を認め、受け止める

インサイド・ヘッドでは「全ての感情」を受け止める

生きていく上で、思い出したくないような「不愉快な感情」を体験することがあります。

映画のインサイドヘッドでは、途中、脳内の感情キャラの「ヨロコビ」が「カナシミ」をブロックしようとします。これにより、主人公の感情が全てシャットダウンしてしまいます。

ストーリーは「カナシミ」だけでなく、他のネガティブな感情にあたる「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」にも注目し、それらの一見ネガティブに見える感情が、人生でどのような役割を果たしているのかを教えてくれます。

例えば、「ムカムカ」は毒などの危険を避ける上で欠かせない感情であり、「ビビり」は注意深く行動するための助けとなり、「イカリ」は自分を守ったり、モヤモヤな気持ちを表現するために必要不可欠であるということが分かっていきます。こういった「不愉快な感情」はネガティブであると決めつけられることが多いですが、映画ではネガティブな感情も受け止めていくことが大切だと教えているのです。

自分に合った健康的なストレスや感情の処理法を見つけるのは時間がかかります。感情の発達がめまぐるしい思春期には特に難しい課題だと言われています。

感情をコントロールするためによく使われるのが「感情の制圧」。つまり不愉快な感情を我慢して押さえ込んでしまう行為です。しかし、「感情の制圧」は不安や抑うつに繋がってしまうことが分かっています。なので感情を抑え込むのではなく、「ポジティブな感情もネガティブな感情もしっかり自分の中で受け止めていく」ということをしていかなければなりません。

例えば、映画の中では脳内の感情キャラの「ヨロコビ」が「カナシミ」をブロックした時、「ヨロコビ」は主人公の脳内がポジティブにしか反応しないように操作しようとします。しかし、様々な研究で、このような手法は「抑うつに繋がる可能性を高める」ことが証明されています。最終的に映画では、「カナシミ」を受け入れることは、他のポジティブな感情を受け入れることと同じくらい大切である、という結果に行きつきます。

専門家はこのような感情の受け止め方を「感情の意識的な包容」と表現しています。感情を差別すること無く、またドラマチックに大袈裟に表現すること無く、客観視できる力をそう呼ぶそうです。この「感情の意識的な包容」をすることによって、メンタルヘルス的に健康な対応がどんな状況でもできるようになっていきます。

人はネガティブな感情を受け入れられるようになってからこそ、その感情をバネにしてポジティブな方向に成長していけます。自分の中の悲しみに気付いて、きちんと受け止めてあげることで、他人の痛みがわかる人間になり、より良い人間関係を築いていくことができるのです。

感情の多様性「エモダイバーシティ」を理解しよう!

「エモダイバーシティ(Emodiversity)」とは感情の多様性のことで、 “emotion(感情)” と “diversity(多様性)” をくっつけてできた言葉です。「多様性のある様々な感情をまんべんなく体感できる力」を指して使われます。

全ての感情を受け入れられるようになると、エモダイバーシティを体験できるようになります。
2014年に、3万7千人の被験者を対象に行われた調査では、ポジティブな感情もネガティブな感情も受け入れるエモダイバーシティが豊かな人ほど、心と身体の両方が健康であることがわかりました。人生においてより多くの幸せを掴むには、幸せも不幸も受け入れていくことが重要です。

英国の詩人、ウィリアムクーパーが「変化は人生のスパイスである」と言ったように、感情においても変化は欠かせないもののようです。

同じ調査によると、1つの状況で豊かな感情を多く感じられると、より広い視野で詳細に物事を理解でき、幸せやより良い選択肢へと導いてくれるようです。また、エモダイバーシティが高い人ほど、ただのポジティブな人よりも、うつの傾向が低いことがわかっています。身体の健康においても、エモダイバーシティが高い人は、薬の服用率、医療費、医者にかかる回数、喫煙率が低く、より健康的な食事と運動ができている傾向にあります。

エモダイバーシティは心だけでなく、身体の健康にも大切だと言えるでしょう。

インサイド・ヘッド

自分の感情を認識して受け止めていくことは、感情の処理とストレスの解消には欠かせません。
映画「インサイド・アウト」は、私たちが感情と健康的に向き合えるようなヒントをたくさん教えてくれるストーリーになっています。

まず、「ネガティブな感情を擬人化」することで強い感情からくるストレスを和らげ、より冷静な選択をすることができます。

次に、ポジティブもネガティブも、全ての「感情の意識的な包容」をすることで、感情の制圧を妨げ、メンタル面でより健康的な成長を促進することができます。

最後に、全ての感情をフルに感じる「エモダイバーシティ」を高めることによって、心と身体、両方の健康を向上させていくことができます。

ディズニーの「インサイド・ヘッド」は単純な子供の映画ではなく、メンタルヘルスケアにおいてとても重要な情報がたくさんつまったストーリーです。観れば、ここに書かれている以外にも隠れているメンタル知識が見つかるかもしれません。

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画像: Unsplash
ソース:

A new strategy to alleviate sadness: Bring the emotion to life: Researchers show how characters from the movie “Inside Out” hold the key to regulating emotions and behavior. (2019, October 3). ScienceDaily. https://www.sciencedaily.com/releases/2019/10/191003103515.htm


Chen, F., Chen, R. P., & Yang, L. (2019). When Sadness Comes Alive, Will It Be Less Painful? The Effects of Anthropomorphic Thinking on Sadness Regulation and Consumption. Journal of Consumer Psychology30(2), 277–295. https://doi.org/10.1002/jcpy.1137


Docter, Pete. (Director). (2015). Inside Out [Film]. Walt Disney Pictures Pixar Animation Studios


Four Lessons from “Inside Out” to Discuss With Kids. (2015, July 14). Greater Good. https://greatergood.berkeley.edu/article/item/four_lessons_from_inside_out_to_discuss_with_kids


How the GGSC Helped Turn Pixar “Inside Out.” (2015, June 19). Greater Good. https://greatergood.berkeley.edu/article/item/how_ggsc_turned_pixar_inside_out


Keltner, D., Oatley, K., & Jenkins, J. M. (2018). Understanding Emotions (4th ed.). Wiley.


Quoidbach, J., Gruber, J., Mikolajczak, M., Kogan, A., Kotsou, I., & Norton, M. I. (2014). Emodiversity and the emotional ecosystem. Journal of Experimental Psychology: General143(6), 2057–2066. https://doi.org/10.1037/a0038025


Variety is the Spice of Emotional Life. (2014, December 22). Greater Good. https://greatergood.berkeley.edu/article/item/variety_is_the_spice_of_emotional_life

AUTHOR

SELF

北里大学医療衛生学部出身の医療系ライターを筆頭に、精神衛生やメンタルケアに特化した記事を得意とする。学術論文に基づいた記事を多く手がけている。