イラっとすることがあった時…見返しと仕返しの心理学

怒り

人間関係の中で、いや〜な嫌味を言われた経験はありますか?

部活、職場、サークル、友人関係……ひどい仕打ちを受けた時や、腹の立つことを言われた時。どうにもスルーしきれなかった場合、

「いつか見返してやる」
「仕返ししてやろう」

この二つの気持ちのどちらかが頭をよぎることがあるかもしれません。
どちらも怒りの感情から来るものですが、果たしてこの二つは心理学的にどのような違いがあるのでしょうか。

怒ることのメリットって何?

そもそも、怒りを表出させるか、我慢してしまうか。
さまざまな研究で、どちらもそれぞれ身体や心へ違う悪影響があるということが判明しています。

何かイラっとくることがあった時、その感情をグッと抑圧してしまうことは
・動脈や心臓など循環器系の病気の危険性を高める
・何回もそれについて思い出してしまい、精神的に疲れてしまう
と考えられています。

かたや、怒りが表に出てしまった場合、自尊感情などが損なわれ、自らへの評価が下がってしまうという研究結果も。

カラダに対してあまりよくない影響があるのに、進化の過程で「怒る」行為がなくならなかったのは、それなりのメリットもあるからだと考えられています。

住環境であれ、コミュニケーションであれ、より快適な状況を作り上げていくことで人間は繁栄してきました。
不快な状況を変えていくため、幸福になることを阻害する要因を乗り越えるために、怒りの感情は良い効果をもたらしてきたのかもしれません。

見返しと仕返しについての実験

最初にお話した「見返してやる」「仕返ししてやる」という2つの気持ちの話に戻ります。

見返す、という言葉は

見下された仕返しとして、りっぱになって相手に見せつける。

岩波国語辞典

仕返し、という言葉は

嫌なことをしてきた相手に、嫌がることをしてかえすこと。

岩波国語辞典

と定義されています。
この2つについて、嫌なことがあった後に考えることで、怒りの感情をどれだけ減らすか、自尊感情をどの程度回復するのかについて大学生・大学院生を対象に調べた実験があります。

対象者には、部活の最中に、他の部員にいや〜なことを言われ、笑いながら立ち去られたという仮定で、

①見返してやろうと考えて、今までにも増して練習に取り組み、時間を忘れるほど集中した後帰宅した(見返し対処群)
②同じ目に合わせてやろうと思い、その部員のそばを通り過ぎる時同じことを言って立ち去った(仕返し対処群)

という行動をとった場面をイメージしてもらい、怒り感情と自尊感情について、嫌なことがあった直後とどのように変化があるのかについて質問紙を通して調査しました。

結果として、

①-見返し対処群の場合には怒り感情が低下、そして下がっていた自尊感情が上昇した
②-仕返し対処群の場合には怒り感情は①よりも大きく低下、しかし自尊感情はさらに下がった

という数値が示されました。

「努力」は心を強くする

仕返しの場面では下がってしまった自尊感情ですが、見返すという行動の場合は回復するということが判明しました。

見返しの中で行われる「どうすればいいか考え、努力する」という行動の中には
・怒りの経験を客観的なものとして受け止めるというプロセスがある点
・肯定的な他者評価に繋がる可能性もある点
という要素が含まれます。これらが、自尊感情の回復に繋がっていると考察されています。

仕返しには直接的に「カタルシス効果」があるために怒り感情の値は大きく下がりますが、他人を攻撃してしまったことの自責の念から、自尊感情は下がってしまうようです。

データ上はもちろんのこと、言葉で強く言い返してしまったり同じことでやり返してしまうと、周囲も巻き込んだ上で人間関係に大きなヒビが入ってしまう可能性もあります。

仕返しはすぐにできてスカッとするかもしれませんが、まずはグッと我慢。
自身を成長させ、長い目で見て怒りを乗り越えることこそが、逆に幸せな心への近道かもしれません。


Image:Unsplash
Source:
怒り感情生起後の対処としての見返しと仕返し(関屋 裕希, 小玉 正博 健康心理学研究 25 巻 (2012) 2 号)